矢野耕平先生の中学受験お悩み相談室

2018-02-09中学受験の塾通い

質問

5年生の母親です。よろしくお願いします。
息子は4年生のころから塾に通っています。
ただ、お恥ずかしい話なのですが私があまりその塾を信用できなくなってしまい、転塾させようかと悩んでいます。
息子本人にそれとなく訊いたのですが、本人は「別に、普通」と言うだけで特に不満などはないようです。(私があの塾はあまり良くない気がするなどと子どもに言うと子どもも不安になるかと思いそのことは言っていません)
親の気持ちだけで新6年生になるこの時期に転塾をさせても良いものでしょうか。
ちなみに信用できなくなってしまったのは、息子の成績が落ちていたときでも「様子見で大丈夫ですよ」などと言われて何も対策をしてくださらなかったことと、何故様子見で大丈夫なのか説明をいただけなかったためです。たしかに成績はその後持ち直したのですが受験生になるのにこれで大丈夫かと思ってしまっています。

回答

 こんにちは。
 転塾については本当に悩んでしまいますよね。塾が違えば教材もカリキュラムも指導法も教わる講師も違ってくるため、その新たな環境が息子さんにとって吉と出るか凶と出るかはなかなか判断できないものです。
 わたしは常々「中学受験の主体は子である」と言い続けています。中学受験勉強に打ち込むのも、合格した中高に通うのも子どもです。
 また、わたしは「教育」とは「教え、育てる」ことではなく、子が自ら「教わり、育つ」ように導くことと解しています。ここにも、学ぶ主体は子ども本人であるという考えが根底にあります。


 それでは、転塾についても子ども中心で考えるべきなのでしょうか?
 わたしはそうは思いません。
 なぜなら、息子さんはまだ小学校5年生。塾の良し悪しを客観視したり、自身の学習状況を俯瞰したりするのは難しいからです。
 息子さんは「別に、普通」と塾についてコメントしたそうですが、おそらく通塾経験のあるのはその塾だけでしょうから(4年生からと書かれていましたので)、その塾で自身の学力を伸ばせるかどうか相対的に判断することはできません。



 文章を読んでいて、お母様の「信用できない」という感覚は正しいのではないかと思いました。
 息子さんの成績低迷の際に「様子見でいいですよ」とその具体的な根拠を示さなかったのはいただけません。
 わたしは保護者のご不安や疑問に対して「具体的な方策」を提示できる塾が「良い塾」だと考えています。
「この科目の○○という単元に苦手意識があるようなので、○月○○日の授業後に個別にアドバイスします。お家に帰ったらぜひその理解度を確認してやってください」
「今回、この問題をミスしてしまいました。来週の確認テストで類題に取り組むので、そこでの正答率が良くなければ、○○というプリントを渡しますね」
 息子さんの状況をよく分かっている塾の講師であれば、こんなことばを保護者に対して返してくるはずです。確かに息子さんの成績は持ち直したのかもしれませんが、それを予見していたのならば、ちゃんと具体性を持った説明を保護者にするべきですよね。


 これと似た話で、わたしは精神論を振りかざす講師も信用してはならないと思っています。
「○○くん、ちょっと気合が足らないんですよ。がんばればもっと出来るようになりますよ」
「もっと『合格してやろう』という前向きな気持ちが出ればミスが減ると思うんです」
 こんなことは誰にでも言えるセリフです。こんなことばを頻繁に発する講師は、子の学習状況を言語化できない、あるいは、分析できていない可能性が高いのです。


 6年生から転塾して学習環境を変えることで上手くいく子も多いです。
 お母様は別の塾の体験授業に息子さんを参加させるなどしてみましょう。
 ひょっとしたら、「別に、普通」ではなく、「とても面白かった!」という反応が返ってくるかもしれませんよ。


 最後に、息子さんの前で塾に対する否定的なことばを発さないように気を付けているお母様はご立派だと思います。そんな賢明なお母様が抱えた「不信感」だからこそ、その感覚は間違っていないのではないかとわたしは思ったのです。



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矢野耕平先生
大手塾に13年間勤めたのちに、2007年に中学受験専門塾「スタジオキャンパス」を設立。代表を務めるとともに国語と社会を担当しています。
著書として『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)など多数あります。
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プロフィール

1973年東京生まれ。大手塾に13年間勤めたのちに、2007年に中学受験専門塾「スタジオキャンパス」を設立し、代表に就任。東京・自由が丘と三田に校舎展開している。また、学童保育施設「ABI-STA」特別顧問 も務める。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『iPadで教育が変わる』(マイコミ新書)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)がある。


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