こんにちは。
転塾については本当に悩んでしまいますよね。塾が違えば教材もカリキュラムも指導法も教わる講師も違ってくるため、その新たな環境が息子さんにとって吉と出るか凶と出るかはなかなか判断できないものです。
わたしは常々「中学受験の主体は子である」と言い続けています。中学受験勉強に打ち込むのも、合格した中高に通うのも子どもです。
また、わたしは「教育」とは「教え、育てる」ことではなく、子が自ら「教わり、育つ」ように導くことと解しています。ここにも、学ぶ主体は子ども本人であるという考えが根底にあります。
それでは、転塾についても子ども中心で考えるべきなのでしょうか?
わたしはそうは思いません。
なぜなら、息子さんはまだ小学校5年生。塾の良し悪しを客観視したり、自身の学習状況を俯瞰したりするのは難しいからです。
息子さんは「別に、普通」と塾についてコメントしたそうですが、おそらく通塾経験のあるのはその塾だけでしょうから(4年生からと書かれていましたので)、その塾で自身の学力を伸ばせるかどうか相対的に判断することはできません。
文章を読んでいて、お母様の「信用できない」という感覚は正しいのではないかと思いました。
息子さんの成績低迷の際に「様子見でいいですよ」とその具体的な根拠を示さなかったのはいただけません。
わたしは保護者のご不安や疑問に対して「具体的な方策」を提示できる塾が「良い塾」だと考えています。
「この科目の○○という単元に苦手意識があるようなので、○月○○日の授業後に個別にアドバイスします。お家に帰ったらぜひその理解度を確認してやってください」
「今回、この問題をミスしてしまいました。来週の確認テストで類題に取り組むので、そこでの正答率が良くなければ、○○というプリントを渡しますね」
息子さんの状況をよく分かっている塾の講師であれば、こんなことばを保護者に対して返してくるはずです。確かに息子さんの成績は持ち直したのかもしれませんが、それを予見していたのならば、ちゃんと具体性を持った説明を保護者にするべきですよね。
これと似た話で、わたしは精神論を振りかざす講師も信用してはならないと思っています。
「○○くん、ちょっと気合が足らないんですよ。がんばればもっと出来るようになりますよ」
「もっと『合格してやろう』という前向きな気持ちが出ればミスが減ると思うんです」
こんなことは誰にでも言えるセリフです。こんなことばを頻繁に発する講師は、子の学習状況を言語化できない、あるいは、分析できていない可能性が高いのです。
6年生から転塾して学習環境を変えることで上手くいく子も多いです。
お母様は別の塾の体験授業に息子さんを参加させるなどしてみましょう。
ひょっとしたら、「別に、普通」ではなく、「とても面白かった!」という反応が返ってくるかもしれませんよ。
最後に、息子さんの前で塾に対する否定的なことばを発さないように気を付けているお母様はご立派だと思います。そんな賢明なお母様が抱えた「不信感」だからこそ、その感覚は間違っていないのではないかとわたしは思ったのです。
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中学受験専門塾「スタジオキャンパス」代表。東京・自由が丘と三田に校舎を構える。国語・社会担当。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)、『LINEで子どもがバカになる』(講談社+α新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書)など多数。最新刊は『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』(文春新書)、『早慶MARCHに入れる中学・高校』(朝日新書)。現在、プレジデントOnline、こそだてオウチーノなどで記事を連載している。