矢野耕平先生の中学受験お悩み相談室

2020-09-15中学受験の塾通い

質問

はじめまして。小4の息子。悩みに悩み先生にたどり着きました。
 いま3年2月から通い始めた大手塾を退塾するかを迷っています。本人の性格を鑑みて、中学受験を目指すべく入ったクラスは上位クラスでした。しかし勉強のレベルがあがり、塾特有の復習がままならなくなり比例するように成績は下がり、下から3番目のクラスまで転落しました。母親が一緒に勉強に付き添い寄り添うも身につかず、勉強が楽しくない気持ちが現れ、ゲームを早くやりたいという義務感にかられて勉強をしているように見えてきました…。
 このようなやりとりや傾向は昨年秋あたりから顕著に出始めてきたように感じます。しかし、本人は塾をやめたくない。理由は関東で一番の塾だからと、プライドだけで続けている状況です。さらに最近家庭内の雰囲気も悪化しているようにも思えます。私としては中学受験で本人が塾の重圧に耐えきれなくストレスでこのような結果になってきたと考え退塾し、クーリングしたのちに新たな塾に本人の中学受験に対する気持ちを整理したうえで入るべきと判断しています。ただトレードオフとして本人のモチベーションがさらに下がることを危惧しています。どうかアドバイスをお願いします。


回答

 こんにちは。
 息子さんの置かれている状況がよく分かりました。
 結論から申し上げます。
 いますぐその塾を退塾しましょう。

 4年生の時点で「母親が一緒に勉強に付き添い寄り添うも身につかず、勉強が楽しくない気持ちが現れ、ゲームを早くやりたいという義務感にかられて勉強をしているよう」に見えるのは早過ぎる「悪い兆候」です。今後、5年生、6年生と進級するごとにお子さんに求められる学習のレベル、学習量ともにハードルが上がるのはまちがいありません。このままだと中学受験勉強を進める中で、親子関係に亀裂が生じ、息子さんが勉強嫌いになってしまうのも時間の問題でしょう。

 ところで、「関東で一番の塾」とは、「何」を指して一番だと言うのでしょう。難関校の合格実績でしょうか?
 たとえば、A中学校というトップ校があったとしましょう。その「関東で一番の塾」は200名の合格者を輩出していて、他塾を数で圧倒しているとしましょう。でも、「200名受験して200名合格」ですか? そうではないですよね。おそらく合格者の倍以上の「不合格者」がそこにいるはずです。
 表面的な合格実績だけを見て一番も二番もありません。中学受験を専門にしている塾で、授業体験などに参加して息子さんが気に入るならどこの塾だってよいのです。
 「一番」の塾に通うという受け身の考えではなく、息子さん自らがその塾で学習に励むことで、結果的に「この塾が一番だ」と思えるようになればいいのです。そうは思いませんか?

 さて、転塾に踏み切るときの息子さんへの「声かけ」のアドバイスをいたします。
「いま通っている○○塾ではついていけないから、○○塾に変えよう」という言い方は絶対にしないでください。「お前はダメだから転塾するんだ」と伝えるのと同義で、息子さんは「他塾に行く」=「中学受験生失格の烙印を押される」といった劣等感を抱くだけです。
 そんな精神状態では新しい環境で前向きに学べるはずはありませんよね。
「お父さんはあなたの中学受験勉強の様子を見ていて、いまはちょっと上手くいっていないところがある。あなたの能力をぐんと伸ばしてくれる新しい場所を見つけたから、そこで中学受験勉強に打ち込もう!」
 こんな感じで「転塾」が未来に向けた「良きこと」であるように話をすべきです。

 最後に。
 失礼ながら、わたしは息子さんが「関東で一番の塾」に通っているなどという要らぬ「プライド」を持たせてしまったのは、ひょっとしたら親御さんのこれまでの言動にも問題があったのかもしれません。
 夫婦でこれまでの息子さんの接し方で間違えてしまったところはないか、一度膝を突き合わして話し合ってみましょう。

 息子さんが新天地で「自ら教わり、自ら育つ」姿勢を身に付けて、たくましく中学受験勉強を進められることを心から願っています。


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矢野耕平先生
大手塾に13年間勤めたのちに、2007年に中学受験専門塾「スタジオキャンパス」を設立。代表を務めるとともに国語と社会を担当しています。
著書として『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)など多数。2018年12月上旬に「旧名門校 VS 新名門校 今、本当に行くべき学校と受験の新常識がわかる! 」(SB新書)が刊行。
中学受験業界に精通されている矢野先生へ、ぜひ受験の不安や疑問などお寄せください!




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プロフィール

中学受験専門塾「スタジオキャンパス」代表。東京・自由が丘と三田に校舎を構える。国語・社会担当。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)、『LINEで子どもがバカになる』(講談社+α新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書)など多数。最新刊は『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』(文春新書)、『早慶MARCHに入れる中学・高校』(朝日新書)。現在、プレジデントOnline、こそだてオウチーノなどで記事を連載している。


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