こんにちは。
息子さんの置かれている状況がよく分かりました。
結論から申し上げます。
いますぐその塾を退塾しましょう。
4年生の時点で「母親が一緒に勉強に付き添い寄り添うも身につかず、勉強が楽しくない気持ちが現れ、ゲームを早くやりたいという義務感にかられて勉強をしているよう」に見えるのは早過ぎる「悪い兆候」です。今後、5年生、6年生と進級するごとにお子さんに求められる学習のレベル、学習量ともにハードルが上がるのはまちがいありません。このままだと中学受験勉強を進める中で、親子関係に亀裂が生じ、息子さんが勉強嫌いになってしまうのも時間の問題でしょう。
ところで、「関東で一番の塾」とは、「何」を指して一番だと言うのでしょう。難関校の合格実績でしょうか?
たとえば、A中学校というトップ校があったとしましょう。その「関東で一番の塾」は200名の合格者を輩出していて、他塾を数で圧倒しているとしましょう。でも、「200名受験して200名合格」ですか? そうではないですよね。おそらく合格者の倍以上の「不合格者」がそこにいるはずです。
表面的な合格実績だけを見て一番も二番もありません。中学受験を専門にしている塾で、授業体験などに参加して息子さんが気に入るならどこの塾だってよいのです。
「一番」の塾に通うという受け身の考えではなく、息子さん自らがその塾で学習に励むことで、結果的に「この塾が一番だ」と思えるようになればいいのです。そうは思いませんか?
さて、転塾に踏み切るときの息子さんへの「声かけ」のアドバイスをいたします。
「いま通っている○○塾ではついていけないから、○○塾に変えよう」という言い方は絶対にしないでください。「お前はダメだから転塾するんだ」と伝えるのと同義で、息子さんは「他塾に行く」=「中学受験生失格の烙印を押される」といった劣等感を抱くだけです。
そんな精神状態では新しい環境で前向きに学べるはずはありませんよね。
「お父さんはあなたの中学受験勉強の様子を見ていて、いまはちょっと上手くいっていないところがある。あなたの能力をぐんと伸ばしてくれる新しい場所を見つけたから、そこで中学受験勉強に打ち込もう!」
こんな感じで「転塾」が未来に向けた「良きこと」であるように話をすべきです。
最後に。
失礼ながら、わたしは息子さんが「関東で一番の塾」に通っているなどという要らぬ「プライド」を持たせてしまったのは、ひょっとしたら親御さんのこれまでの言動にも問題があったのかもしれません。
夫婦でこれまでの息子さんの接し方で間違えてしまったところはないか、一度膝を突き合わして話し合ってみましょう。
息子さんが新天地で「自ら教わり、自ら育つ」姿勢を身に付けて、たくましく中学受験勉強を進められることを心から願っています。
中学受験に関する相談や質問を受付中です!
毎月、お寄せいただいたお悩みの中から先生が2つを選んで上旬と下旬に回答いたします。(お悩みを採用させていただいた場合でも、ご連絡はしておりません)
すべてのご相談には回答できませんので、あらかじめご了承ください。また、個別のご質問に対して、メールでの直接回答はいたしかねますので、ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
中学受験専門塾「スタジオキャンパス」代表。東京・自由が丘と三田に校舎を構える。国語・社会担当。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(ともに文春新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書)など多数。最新刊は『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)。現在、AERA dot.やプレジデントOnline、ビジネスジャーナルなどで連載記事を執筆している。