こんにちは。
お母様のようなご不安を抱えている方は多く、わたしもたびたび同種の相談を受けることがあります。
まずは、わたしの考える「叱る」と「怒る」の違いについて述べたいと思います。
「叱る」とは理性的なふるまいです。「相手のことを考え、冷静な気持ちで教え諭す」こと。一方、「怒る」とは、思わず頭に血がのぼってしまう感情的なふるまいです。そこには相手の気持ちを慮る姿勢が欠如しています。
塾の模試が近くなり、つきっきりで勉強を見ているお父様が娘さんに対して果たして「叱って」いるのか「怒って」いるのかは、娘さん(受け手)がそれをどう受け止めているかで判断すべきでしょう。
娘さんがそういうお父様に嫌悪感を抱いているならば、お父様は「怒って」指導しているのでしょう。そうではなく、娘さんがお父様のサポートを心から望んでいるのであれば、お父様は「叱って」いる可能性が高いといえます。
後者であれば、しばらくは様子見でよいかと思います。
問題なのは前者です。お父様が感情的に「怒って」指導すると、娘さんが委縮してしまうだけでなく、学ぶことそのものが苦痛になってしまいます。こうなると中学入試で成功が望めないどころか、その後の学習生活において大きな傷跡を残してしまうことがあるのです。
お母様の文面に目を通す限り、わたしは「前者」の可能性大だと考えます。
その根拠は「塾の模試が近くなると」という文言です。
塾の模試で良い成果を出さなければならないと思う気持ちはよく理解できます。でも、模試の近くになって慌てて指導するとなると、これはお父様が追い詰められた結果、ある種「一夜的な指導」を娘さんに強いるという短絡的な考えに陥ってしまっているのではないでしょうか。
模試の数値は一朝一夕に上げることのできないものです。
日々の計画的な学習の積み重ねがどうであったかを試しているのが模試の役割なのです。
「いまのやり方で果たして娘の学力が伸びるのだろうか」
「いまのやり方で娘が学ぶことを好きになってくれるだろうか」
そんな観点を持ち、お母様とお父様が二人でじっくりと話し合ってみる機会を設けることが必要です。
学ぶ主体は娘さん当人です。
娘さんを「自ら教わり育つ姿勢」にどう導いていくのか。それを熟考してもらいたいと思います。
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中学受験専門塾「スタジオキャンパス」代表。東京・自由が丘と三田に校舎を構える。国語・社会担当。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(ともに文春新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書)など多数。最新刊は『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)。現在、AERA dot.やプレジデントOnline、ビジネスジャーナルなどで連載記事を執筆している。