こんにちは。
具体的な回答をおこなう前に、「勉強/学習」ということばと、「教育」ということばについて持論を述べたいと思います。
わたしは「勉強」ということばがあまり好きではありません。「強いる」という意味が含まれていて、なんだか子が「やらされるもの」「苦しいもの」といったイメージがあるからです。
でも、そもそも「勉強」「学習」とは、子が新しい知識をどんどん獲得することだと考えます。そう。何かを学ぶということは、自分の知らなかった世界を自らの内に手繰り寄せることなのです。言い換えれば、人は学んでさまざまな知識を仕入れれば仕入れるほど、目に見える世界は一気に広がっていくのですね。
こう考えると、「勉強」「学習」とは本来はとても楽しくて、かつエキサイティングなものです。
つづいて、「教育」ということばについて立ち止まって考えてみましょう。
わたしの考える教育とは「教え、育てる」ことではありません。わたしは「教育」を「(子が)自ら教わり、育つように導くこと」と定義しています。つまり、周囲の大人たちが子の「自立心」をいかにして引き出すかを熟考し、それを具体的な行動に移すのが「教育」ではないでしょうか。
わたしは20年以上中学受験の世界で多くの子どもたち、ご家庭と接してきましたが、成績をぐんと伸ばし第1志望校に合格する子、そして、中学校に入学して以降も学力向上を果たす子に一脈通じているのは、「主体的」に学ぶことを楽しめる子であるという点です。
さて、上記のことを踏まえれば、親が子に付きっきりで教えなければならず、それにより互いにバトルを繰り返し、ストレスが増長されていくという状況は健全なものではありません。
このような悪循環を断ち切るためには、中学受験の学習における「親子の分離」が必要です。
もし、いまお通いの大手塾が「ご家庭のサポートありき」のシステムであれば、ここは思い切って塾を変えてください。
中学受験塾といってもその特徴はさまざまです。
わたしは「ご家庭のサポート」を求めすぎない塾、たとえば、自習室や質問できる環境が整っているところに転塾すべきと考えます。
それまで当然のようにおこなっていた親のサポートがなくなってしまうと、しばらくは各科目とも成績が低下することでしょう。でも、一度親が手を離すと決めたからには辛抱強くお嬢様を見守ってほしいと思います。自ら学習に取り組む姿勢を徐々に身につけていければ、それに伴い成績もじわじわと上がってくるはずです。
「中学受験の勉強をする」のではなく、「中学受験を利用してどういう勉強姿勢を身につけてもらうか」に重きを置き、日々のお嬢様の成長に目を向けてほしいと思います。
親子関係が改善するとともに、お嬢様が楽しく学べるようになることを心より願っています。
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中学受験専門塾「スタジオキャンパス」代表。東京・自由が丘と三田に校舎を構える。国語・社会担当。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(ともに文春新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書)など多数。最新刊は『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)。現在、AERA dot.やプレジデントOnline、ビジネスジャーナルなどで連載記事を執筆している。