こんにちは。
娘さんの受験が近づいてきて、言い知れぬ不安が次々と襲ってくるのですね。このような精神状態に陥ってしまう方は決してめずらしいわけではありません。娘さんを思う気持ちがほんの少し強すぎるだけなのだと思います。
お母様がおっしゃっているように、時として親の不安が入試を控えた子に「伝播」してしまうケースがあります。しかしながら、娘さんの「うんざりしている」態度からすると、その心配はあまりなさそうだなあという気がします。お母様の小言に対していちいち「落ち込む」子は「要注意」ですが。
お母様はわたしに「喝」を入れてほしいとのことですが、わたしが厳しいことをここで言い立てたとしても、多分その不安から解放されることはないでしょう。
「喝」の代わりに、某私立中高(ミッション校)の校長先生から聞いたことばを贈りたいと思います。
「親というものは、子の成長を見守っているうちに、子に『付加価値』を付けたいという欲が出てきてしまいます。が、その欲が強すぎると子の自立を妨げてしまうことが多々あるのです。わたしは親が『初心』に返ることが大切だと思っています。つまり、子が誕生した瞬間に抱いた心に立ち戻るということです。皆さん『無事に生まれてきてよかった』と心から喜んだはずです。そう、子というのは『生きている』それ自体が尊いことなのです」
お母様は娘さんの中学受験が心配で胸が張り裂けそうな思いを抱かれています。
その気持ちはわたしにもよく理解できます。
でも、中学受験で不合格になったところで大切な娘さんの「命」まで取られるわけではありません。
不本意な結果が待ち受けていたとしても、娘さんはそれを自身の責任として引き受け、きっとたくましく育ってくれるはずです。
そう思えば、ほんの少し気分が晴れるのではありませんか?
そのうえで、娘さんの受験を温かく見守ることこそが母親として取るべき態度ではないかと考えます。
それでも、どうしても不安に押し潰されそうになるときがあるかもしれません。
そんなときは、その矛先を娘さんに向けるのではなく、ご主人や身内の方にぶちまけるのもよいかと思います(塾の講師でもよいかもしれませんね)。
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中学受験専門塾「スタジオキャンパス」代表。東京・自由が丘と三田に校舎を構える。国語・社会担当。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(ともに文春新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書)など多数。最新刊は『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)。現在、AERA dot.やプレジデントOnline、ビジネスジャーナルなどで連載記事を執筆している。