矢野耕平先生の中学受験お悩み相談室

2017-04-05中学受験の学校選び

質問

夫婦ともに大学まで共学校出身のため、私立中学校の男子校・女子校の雰囲気や利点がわかりません。男女別学の魅力は何ですか?

回答

 こんにちは。
 最近の首都圏中学入試状況を観察していると、共学校に人気が集まっています。
 実際、受験生の保護者と進路についての面談をすると、こういうことをよく言われます。
「世の中って男と女で成り立っているじゃないですか。そう考えると、中高生という多感な時期はやはり男女が同じ学び舎にいることが健全だと思うのです」
 加えて、近年は男女別学の学校がどんどん共学化していきます。
 文部科学省の学校基本調査(平成28年度)によると、全国に4925校存在する高等学校の中で「男のみの学校」(男子校)は112校、「女のみの学校」(女子校)は311校。つまり、男子校は2.49%、女子校は6.31%しかないのです。男子校生・女子校生はいわば「希少種」と言い表しても過言ではありません。


 それでは、いまの時代に男女別学の教育はそぐわないのでしょうか。


 わたしはそうは思いません。男女別学にはそれぞれの魅力がふんだんにあると感じています。これについて論じ始めるとそれだけで本が一冊書けそうなくらいですので、ここではその魅力を一点にしぼり、ざっくりと説明したいと思います。


女子校・男子校の魅力


 まず、男女別学の最大の魅力は、多感な中高時代に「異性」の目を気にせずに学校生活を送れることだと思います。学び舎には異性が存在しないわけですから、そこでは自分たちの「性別」が消滅するのですね。つまり、「男だから……」「女だから……」ということばは一切通用しない、一人の「人間」としてそこでふるまうことが求められます。これにより得られるメリットは多いと考えます。


 たとえば、地学が大好きで、将来はそれに関連する道への進路を希望する男子校生がいるとしましょう。
 彼が地学の研鑽を積むには「共学校」より「男子校」のほうが良い環境である可能性が高いのです。
 なぜか。「共学校」だとどうしても「女子生徒に自分がどう見られているのか」を気にすることになります。地学の学習ばかりに没頭していたら、「あの人、オタクだよね」と女子生徒に言われてしまうかもしれない……。たとえ、そんなふうに言われなかったとしても、勝手にその種の不安を抱き、地学の勉強を自制してしまう……。これはあくまでも仮の話ではありますが、似たような話を共学校出身者から多く聞くのです。その点、男子校だと「恥」を意識することなく、自分のやりたい道をとことん追究している人が多い。「オタク」は恥ずかしいことでもなんでもなく、男子校の中ではむしろ賞賛に値すること……これも、数多くの男子校出身者がそう証言しています。


 一方、女子校はどうでしょうか。
 やはり「異性」を意識しないからこそのメリットがあります。
 拙著『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)から引用します。


 2000年度~2011年度までJGに勤めた田中弘志前院長は女子教育の持つ意味を次のようにまとめて話してくれた。
「彼女たちにとって人生の多感な時期に女性だけで学ぶ意味は、男性の目を意識しないで伸び伸びと飾らずにありのままの自分を出せるという点がまず挙げられます。たとえば、容姿に劣等感を持っている子。男性の前だとそれに引け目を感じている子であっても、女性の中だけだと自分が身に纏ったものをすべて剥ぎ取って『良いところ』も『悪いところ』もさらけ出せる。自分の持つ『光るもの』を周囲に評価してもらえる環境があるのです」
 そのような評価を受けた子は、その先大学や社会に出た際に、周囲が評価し認めてくれたその自身の内なる部分に大きな自信を持って堂々とふるまうことができるという。

(矢野耕平『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)「序章」より抜粋)


 「男子だけ」「女子だけ」という中高生活を送った人たちは、学校生活を送るうちにその結束はどんどん強くなり、濃厚な人間関係を構築していきます。
 わたしはこれまで数多くの男子校出身者、女子校出身者、共学校出身者に取材をおこなってきましたが、大人になっても中高時代の友人たちといつまでも仲良くしているのは、やはり「男女別学」の出身者が多いのです。この点も男女別学の魅力であり、先述した「異性の目を気にせず」学校生活を送れるというところと密接に関連しているのでしょう。


 このことを頭の片隅に入れた上で、ぜひ男子校や女子校の学校説明会や文化祭などに足を運んでみてはいかがでしょうか。思いもよらない男女別学の魅力が浮かび上がってくるかもしれません。



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矢野耕平先生は大手塾に13年間勤めたのちに、2007年に中学受験専門塾「スタジオキャンパス」を設立。代表を務めるとともに国語と社会を担当しています。
著書として『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)など多数あります。

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プロフィール

1973年東京生まれ。大手塾に13年間勤めたのちに、2007年に中学受験専門塾「スタジオキャンパス」を設立し、代表に就任。東京・自由が丘と三田に校舎展開している。また、学童保育施設「ABI-STA」特別顧問 も務める。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『iPadで教育が変わる』(マイコミ新書)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)がある。


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