こんにちは。
中学受験指導をおこなう多くの塾では、夏休みの6年生の受験勉強は質量ともにかなりハードです。一般的に親は子の努力を過小評価してしまうものです。お母様が「たくさん勉強をした」とおっしゃっているくらいですから、娘さんは朝から晩まで受験勉強に専心していたのでしょう。立派です。
その努力の成果が結実するはずの9月のテストで成績が下がってしまったとのこと。お母様のご不安や焦り、そして娘さんのやりきれなさと悲しみは痛いほど理解できます。
ここでお母様にお願いしたいことは、落ち込む娘さんに対して「泰然自若」とした姿勢を貫いてほしい(「演技」してほしい)ということです。「今回は得点に結びつかなかったけれど、夏の成果はきっとこのあとに出てくるはずだ」と温かな励ましのことばをかけてやってほしいのです。
実際、夏にインプットした膨大な知識が即座に得点につながるというケースは少ないのです。学習したことがまだしっかり「消化」されていないのでしょう。
9月以降は志望校の過去問の取り組みをはじめ、塾ではいままでの総復習的な学習をおこないます。そんな中で、夏に覚えた知識と実際の問題の中で再度出会うことにより、それらの復習を何度も何度もおこなう――それが先に述べた「消化」に当たるのです。「消化」することではじめてそれらを実際の得点に繋げることが可能になります。
ですから、焦らないでください。入試本番まであと4ヶ月「しか」残されていないのではなく、4ヶ月「も」残されているのです。お母様が娘さんに明るい笑顔を向けて、娘さんの力が発揮されるそのときを「待つ」姿勢を貫けば、良い結果が出るのではないでしょうか。
そして、お母様にお願いしたいことがもう一つございます。
入試まであと4ヶ月。受験する学校はすべて決まっていますか。
もし決まっているならば、それらの学校に序列をつけるような発言は禁句にしましょう。「お母さんはあなたが受験する学校すべて好きだよ。だから、どの学校に進学したとしてもお母さんは大満足」――このような声をかけると娘さんもずいぶん気が楽になるのではないでしょうか。もちろん、このことばを「演技」で発するのではなく、本心から言えることが望ましいのですが。
以上2点のお願いをしましたが、これらは娘さんの前向きな姿勢を引き出すための試みです。
娘さんの中学受験が笑顔で終わることを心よりお祈り申し上げます。
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中学受験専門塾「スタジオキャンパス」代表。東京・自由が丘と三田に校舎を構える。国語・社会担当。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(ともに文春新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書)など多数。最新刊は『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)。現在、AERA dot.やプレジデントOnline、ビジネスジャーナルなどで連載記事を執筆している。