こんにちは。
入試まで残すところ5か月。志望校の過去問に手をつけたものの、「合格者平均点」にはほど遠い状態……。そんなお子さんを見て、なんだか心配になってしまう気持ちはよく理解できます。
しかし、この夏に過去問演習をおこなって合格ラインに届く子などほとんどいないのです。
実際、わたしの塾では9月より子どもたちひとり一人に「過去問演習記録表」や「過去問演習ノート」を提出してもらっていますが、過去問に取り掛かった最初の頃は、合計得点が合格ラインに達する子などまずいません。結果として第1志望校に合格した子であっても、振り返れば9月時点の過去問合計得点は合格者平均点(あるいは、合格最低得点)に50点、なかには100点ほど足らない子も大勢います。
これは一体どういうことでしょうか。
まず、「合格に向けた総合的な力」が培われるのは、6年生の秋から冬にかけてであるということです。おそらくこの夏に膨大な時間をかけていままでの各科目の「復習」をおこなったことでしょう。しかしながら、それらの復習内容が頭の中でまだ整理されていない状態なのです。秋から始まる「総合的な範囲の問題」の演習(もちろん、ここには過去問演習を含みます)を通じて、子どもたちは膨大な知識を徐々に消化していくのです。
次に、志望校の過去問にはそれぞれの学校の「クセ」があります。入試問題の構成や各問題に充てる時間配分などが分かっていないと、すぐに高得点をとるのは難しいといえます。第1志望校であれば、少なくとも6~8年分を制限時間通りに演習し、時間をかけてミスした箇所の「直し」に取り組んでいく……。その作業を繰り返すことで、徐々にその学校の入試問題で得点するコツをつかんでいくものです。
ですから、ご安心ください。
わたしが一番不安に思うのは、この時期に悪戦苦闘しているお子さんに対して、保護者が悲観的なことばを投げつけることだと考えます。入試直前期に受験勉強に打ち込むわが子についもどかしい思いを抱いてしまって、キツいことばを浴びせてしまう……。これがきっかけで本格的な「スランプ」に陥ってしまう子が案外多くいるのです。
わたしの執筆したプレジデントOnlineの記事を最後に紹介します。わたしの言わんとすることがお分かりになるはずです。
「中学受験は『親の器の大きさ』がすべて」(プレジデントOnline)
お子さんが志望校に合格できるよう、ぜひ温かな目で支えてやってください。
中学受験に関する相談や質問を受付中です!
毎月、お寄せいただいたお悩みの中から先生が2つを選んで上旬と下旬に回答いたします。(お悩みを採用させていただいた場合でも、ご連絡はしておりません)
すべてのご相談には回答できませんので、あらかじめご了承ください。また、個別のご質問に対して、メールでの直接回答はいたしかねますので、ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
中学受験専門塾「スタジオキャンパス」代表。東京・自由が丘と三田に校舎を構える。国語・社会担当。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(ともに文春新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書)など多数。最新刊は『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)。現在、AERA dot.やプレジデントOnline、ビジネスジャーナルなどで連載記事を執筆している。