中高パスナビ編集部

2015-01-20その他

開成学園 柳沢校長による特別教育講演会(1)

2014年12月17日、駿台・浜学園お茶の水教室開校1周年特別企画として、「子育て全般を通じて、大学進学までを見据えた教育のあり方について」をテーマに開成中学・高等学校の柳沢幸雄校長(東京大名誉教授)の講演がありました。今日から3日間、講演会の概要をお届けします。

※開成中学・高等学校公式サイトはこちらをご覧ください。

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子育ては人生において一番輝いている時期だと思います。私自身が子育てをしていた頃を振り返ると、一番変化に富んで輝いていました。万葉歌人・山上憶良の歌に「銀も金も玉も何せむに、勝れる宝子にしかめやも」とあります。どんな金銀財宝よりも子供が大事だということです。


私は今までに三カ所の教育現場に携わってきました。ハーバード大学公衆衛生大学院、東京大学大学院、開成中学・高等学校です。そこで見てきた若者の様子から、子育てについて考えたいと思います。

ハーバード大学公衆衛生大学院で10年以上教えてきて感じたことは、アメリカ人の学部新入生の知識量はそれほど多くないにも関わらず、自信満々に発言することです。

一方、東京大学大学院環境システム学専攻で教えていた頃は、授業という知的刺激に反応せず、応答が少ない学生がいることを感じました。しかし学生と個別に話してみると、学部新入生の知識量はアメリカの同世代の学生よりも多いのです。

その後、2011年から開成中学・高等学校の校長になって感じたことは、開成を卒業する前の生徒たちは、知識・人格・精神的成熟度において「世界一の18歳集団」だということです。

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卒業式での式辞

私は開成高校の卒業式での式辞で、こんな話をします。

「ハーバード大学で教えてきた私の経験によると、開成の諸君が卒業時に身につけている能力は、18歳の集団として世界一であると断言できます。その能力とは、知力だけではなく、大人として生きる力、すなわち精神的成熟度においても、世界一の到達度であると言えます。しかし、東京大学で教えてきた私の経験によると、開成を含む首都圏の進学校出身者の多くが大学で伸び悩んでいることを、強く憂慮しています。 18歳のときに世界一の集団であった諸君が、4年後には世界一どころか日本一でもなくなってしまう。なぜでしょうか―。」

典型的な東大生のタイプに「冷めたグループ」「燃え尽きたグループ」「燃えているグループ」があるように思います。大多数の人は、卒業すると平凡な人になっています。

地方と首都圏の進学校出身者は若干異なります。地方出身者は、親元を離れて一人になるので大人にならなければいけません。日々の家事や生活費の管理をして、大学で自分の居場所を見つけなければいけません。一方、首都圏出身者の大多数は自宅から大学に通います。すると大学でも同じ友達関係になります。東大に進学すれば大学受験という重しがなくなり、進学校出身者の多くは自分の勉強スタイルを持っているので大学で単位を取るのは容易です。そして大学の勉強で燃えることがなく冷めた集団になる可能性があります。

受験だけを目標に中学・高校時代を過ごした子は、合格というゴールを達成したために燃え尽きてしまいます。受験に対して効率の良い勉強法を教えられてきたため、自分の勉強スタイルがありませんので、大学進学後にどのように勉強をすればよいか分からなくなるのです。


日本人の若者の自己肯定感は諸外国に比べて低い

内閣府が行った「平成26年版 子ども・若者白書」の調査結果を見ますと、日本人の若者は海外の同年代の若者に比較して自己肯定感が低い傾向があります。それは、「自分自身に満足をしていますか」という質問に対し、日本人の13~29歳はきわめて低い満足度で、「満足している」・「どちらかといえばそう思う」が45.8%でした。アメリカは86%、韓国は71.5%、イギリスは83.1%など、諸外国は日本と比べて自己満足・自己肯定感はかなり高いのです。

また、「自分には長所がありますか」という問いに対して、長所があると自覚している若者の割合も、世界の中で少ないのです。アメリカは93.1%の若者が自分には長所があると思っているのに対し、日本は68.9%でした。

自信満々で自己肯定感が高い若者が世界に出るとどうなるのでしょうか。ハーバードを卒業した学生は、自分の意見を発言し続けます。知的刺激、論理の展開に常に応答するために、思考が活性化します。このように発言を続けると、間違った発言をした場合に他者から指摘されると、知識の補強をしようと努めます。


輝きを失わないために

日本の高校生は非常に高い潜在力を持っていると思います。しかし大学を卒業して社会に出たとき、輝きが鈍くなります。なぜかというと、意見を述べる機会が少なくなるからだと思います。まず意見を述べるのではなく、場の雰囲気を確認します。周りが発言しないと自分も発言しないため、知識の補充をする必要を感じなくなります。

自分の意見を表明するために何が必要でしょうか。それは「自己肯定感」です。“自分はこう考える。その考えを他の人はどう考えるのかを知りたい。自分が考えたことは、今まで学んできた知識の集大成である”という自信を持つことが必要です。どうしたらそんな意識を育てられるのか。アメリカ人はどうしてそんな自信が持てるのでしょうか。

アメリカの子供たちはほめられて育ってきたのです。英語でほめ言葉はamazing, awesome, brilliant, clever, cool, elegant, enough, excellent, fabulous, fine, good, great, marvelous, nice, outstanding, perfect, positive…などたくさんあります。逆に貶し言葉はbad, poor, stupid, imperfect, insufficient, unskilledなどありますが、ほめ言葉に比べて数は少ないです。

多くの日本人は、ほめられた経験は記憶していないかもしれません。
赤ちゃんの頃はハイハイができたとき、二足歩行ができたとき…と、子供は親にほめられて、危険を乗り越えて成長します。それが成長するにつれて、「いったい何やっているのよ」と叱ったり怒ったりすることが増えます。隣の子はできるのに、なぜうちの子はできないのか、と比べるようになるからです。小さい頃は、隣の子と比較するのではなく、子供が産まれた頃からの状況と比較して成長を実感してきました。 つまり、比較する対象が変わると、叱ることが常態化してしまう可能性があるのです。




明日も引き続き、講演会の概要をお届けします!お楽しみに!




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