2020-04-24

パスナビスペシャルインタビュー
首都圏2020年中学入試結果から2021年入試を展望する!最新の入試状況&トレンドを知って、ベストな学校選びをしよう!

首都圏中学模試センター取締役教育研究所長 北一成先生
首都圏中学模試センター 取締役教育研究所長 北一成先生

中学入試は、子どもの将来を決める最初の関門です。その関門を突破するには、現状についての正確な情報収集が欠かせません。なぜなら、みなさんが考えている以上に、中学入試は変化し、近年はさらに急な動きを見せています。 その背景にあるものとは、何でしょうか?
わが子が持つさまざまな能力を、もっとも発揮できる学校はどこなのか? 最良の学校選びをするために、首都圏の最新の中学入試情報を、首都圏模試センターの北一成先生にお話をうかがいました。

この記事は『2021年度入試用中学受験案内』(旺文社)より転載しました。

首都圏の私立・国立中学受験は6年連続、右肩上がり!

 今年の首都圏(1都3県〈神奈川、千葉、埼玉〉)の私立中学・国立中学入試を振り返ると、総受験者数は昨年より約2,200人増えて約49,400人となり、2015年から6年連続の増加傾向を維持しました。この人数が、今年の首都圏の全小学6年生の総数(約297,280人)に占める割合は16.62%となり、約6人に1人が中学受験にチャレンジしている結果となります([表1])。
 このいちばんの要因は、今後、実施が決まっている「大学入試改革」にあることはいうまでもありません。


1都3県の私立・国立中学の受験者数の推移

男女別の平均の出願校数は?

私立中学入試に大きく関わる大学入試改革の内容とは?

 来年、2021年からの大学入試では、これまでの「センター試験」から「大学入学共通テスト」に変わります。当初、国語と数学の一部の問題に記述式試験が、さらには英語では民間の検定試験も導入されることが決まっていましたが、文部科学省はその実施を見送ったことはみなさんもご存じのとおりです。
 しかし、今後も引き続き、高校教育、大学教育、そしてそれをつなぐ大学入試の在り方を改革するという方針を国は強く打ち出しています。2024年以降の第2期大学入試改革では、従来の入試スタイルから、受験生の思考力・判断力・表現力を問う入試に変わることが決まっているのです。
 その背景には、日本社会の構造変化、さらには国際的なグローバル化、AIに代表される高度情報化社会の到来……、これらに対応できる人材の育成が求められることがあります。
 一方、こういった社会的変化や要請に対し、首都圏の多くの私立・国立中学は迅速かつ敏感に反応しています。
 実際の入試では、従来の4教科型・2教科型入試に加え、「適性検査型入試」や「英語(選択)入試」などに代表される、「新タイプ入試」を実施する学校が年々、増え続けています。
 同時に、各学校でカリキュラムの見直しも盛んに行われていることは見逃せません。例えば、来年から本郷が、さらに再来年から豊島岡女子学園が、高校募集を停止することを発表しています。つまり、両校では中高一貫教育体制をより強めることで、教育内容をより進化・発展させようとする意図を強く打ち出しているのです。
 来春、子どもを中学受験にチャレンジさせようと考えている保護者のみなさんは、首都圏の中学入試においては、こういったトレンドを知っておくことがとても重要となります。


「新タイプ入試」実施校の増加が加速度的に進む!

 今年の入試の結果・状況を見てみると、まず、男女ともに難関校・準難関校では、昨年と比較して受験者数が微減もしくは昨年並みという学校も若干数ありますが、ほとんどが人数を増やしました。
 その要因として、2〜3年かけて進学塾で4教科をしっかり勉強してきた成績上位の受験者の多くが、塾の指導もあって強気にチャレンジしたからだと考えられます。
 また、全体の受験者総数が増えているいちばんの原因は、「新タイプ入試」を実施する学校の増加があげられます。今年の私立中学入試で「適性検査型(思考力型)入試」実施校は、149校にのぼり、全体で、のべ約13,000名の応募者がありました。一昨年が136校、昨年が147校だったことを考えると、増え幅は小さくなったものの来年以降も増える傾向にあることは間違いないと思われます。

今年のトレンドは、男子校と大学付属校人気!

 今年の入試では、男子校と大学付属校の人気が高まったことは見逃せません。特に都内の男子校では難関校から中堅上位校のほとんどの学校で受験者数は増加しました。伝統ある男子進学校では、巣鴨世田谷学園海城城北攻玉社高輪成城などに人気が集まりました。なかでも、巣鴨は4回実施した入試すべてで昨年を大きく上回る倍率を記録し、[表3]「入試別 対前年 志願者数増加 トップ5」を見ると、そのうちの3つの入試がランクインしています。
 一方、大学付属校では、早稲田慶應普通部法政大学第二をはじめ、早慶やGMARCHの付属校の多くが昨年より受験者数を増やしています。その要因として、今後の大学入試改革の内容がまだまだ明確にされていないことで、保護者が老舗の進学校に信頼を寄せたこと、また、大学付属校に進めば系列の大学に進学できる可能性が高いという安心感があることはいうまでもないでしょう。


2019年入試別 対前年 志願者数増加 トップ5

「グローバル化」を促進する 学校の人気が上昇!

 また、中堅校では、来年から共学化を発表している芝浦工大附属が目立って受験者を増やしました。同校は、ここ数年のうちに豊洲新キャンパスへの移転や、教育改革を矢継ぎ早に実現し、それが人気上昇に結びついたことは間違いありません。ここ数年、受験者数の伸び率が高かった東洋大京北は、昨年の入試とほぼ同じくらいの倍率で落ち着きました。
 ちなみに、法政大学第二芝浦工大附属東洋大京北の3校は、母体である大学がともに国から「スーパーグローバル大学」の認定を受けており、大学も含めて全学でグローバル化を促進している姿勢が人気の秘けつとなったようです。
 大学付属校の中堅校では、日大の付属各校の人気が高く、なかでも日大の付属校で唯一の男子校である日大豊山の人気が顕著でした。
 また、昨年、校名を変えて日大の準付属校となった目黒日大も昨年を上回る受験者を集めています。

今年の女子校の入試状況は やや落ち着いた感アリ!

 女子校については、全体的に見て、各校とも受験者数は前年並みか微減といった学校が大多数を占めました。難関校では、桜蔭女子学院フェリス女学院などはほぼ前年並みか微減、雙葉は前年より応募者を約40人増やしました。
 女子校で人気を集めている学校の大きな特徴として、校風・カラーが色濃く、教育改革や入試改革に積極的に乗り出し、それを外に向けて強く発信している点があげられます。
 現状ではフェリス女学院が広報活動に力を入れはじめたことで、人気が高まりました。


依然、受験者数が増える午後入試の現状とは?


2/1の東京都と神奈川県の実受験者数(一部推定、単位:人)

 2月1日の午後入試の状況を、上の[表2]に東京都と神奈川県の受験者数をまとめました。
 全体として、一昨年、午後入試を実施する学校が一気に増えましたが、今年、算数1科などで新たに開始した学校もあり、受験者数はいずれも増加しており、なかでも東京都の共学校の対前年の伸び率がもっとも高いという結果となりました。
 個別に見ると、巣鴨(算数選抜)が昨年よりさらに応募者を増やし、今年は766名(競争率38.3倍)に達しました。
 ほかには、世田谷学園恵泉女学園田園調布学園(今年から実施)、三輪田学園山脇学園かえつ有明東京都市大学等々力日本大学などが300人以上の応募者を集め、昨年より応募者数が増加しています。
 2日の午後入試では、香蘭が877人、青山学院横浜英和が男女合わせて584人の応募者を集めました。なお、プロテスタント系の学校では日曜日には入試を実施しないというのが通例で、通常より1日ずらして試験を実施することがあります。その結果、他校も含めて入試動向に影響を与えることを「サンデーショック」と呼びます。今年の入試は2月2日が日曜日にあたったので青山学院が2日から3日に試験日をずらしましたが、それほど大きな影響のない「プチ・サンデーショック」の年でした。

首都圏の公立中高一貫校の入試状況から見えてくるもの

 公立中高一貫校は、首都圏全体で見ると志願者数は微増にとどまりました。全体的に、高倍率の学校がとても多いので高止まりということはいえるでしょう。
 たとえば、昨年、開設されたさいたま市立大宮国際は、昨年は募集定員約160名に男女合わせて1,010名もの志願者を集めるほどの大人気でしたが、今年は702名に落ちつきました。なお、同校は首都圏の公立中高一貫校のなかで初めてのIBスクールです。
 IBスクールとは、国際バカロレア機構が提供する教育プログラムも導入する学校で、IB認定校で定められたカリキュラムを修得し卒業すると海外の大学の受験資格などを得ることができます。
 埼玉県では、来年、川口市に公立中高公立中高一貫校が開設される予定ですが、この学校も前評判はとても高く、入試では高倍率になることは間違いないでしょう。ロケーション的にも、川口市は東京都に隣接していますので、都内北部の私立中学入試にも大きな影響を与えることも予測できます。
 茨城県では今年5校、県立高校の附属中学が新設されましたが、いずれも募集人数が少ないこともあって、竜ヶ崎第一高校附属中学以外は、最高でも3倍程度の倍率で落ち着きました。
 来年には、土浦第一高校と水戸第一高校でも附属中学が開設されますが、この2校の人気は爆発的に高くなることが予想できます(※)。そのため、茨城県内の私立中学では早くから危機感を抱き、新たな入試制度(適性検査型入試など)の導入や医学部受験コースの設置などに取り組むところも増えそうです。同時に、来年以降、公立一貫校との併願者を迎える姿勢を強く打ち出していくことも予想でき、結果、公立・私立双方の全体の志願者数を増やすことにつながるでしょう。

※他に、県立勝田中等教育学校(ひたちなか市)の設置も予定されている

「英語入試」導入校は ますます増加している!

 冒頭で、「適性検査型(思考力型)入試」などの「新タイプ入試」を実施する学校がとても増えていると述べましたが、こういった学校は準難関校から中堅校に多いのが特徴です。
 「新タイプ入試」のひとつである英語(選択)入試でもっとも多いスタイルが国語・算数・英語の3教科型です。次に、国語・英語か算数・英語の2教科型、さらに英語1教科型となっています。
 今年の実施校は全部で141校(私立中学140校、国立中学1校)と前年に比べ14校増えました。その増え方の勢いは、適性検査型入試等を導入する学校の増加率を上回り、今後も増加すると考えられます。

「新タイプ入試」の増加で中学受験のすそ野が広がる!

 「新タイプ入試」のひとつである適性検査型入試には、さまざまなタイプがありますが、なかでも教科の枠を超えた問題に対して、自分なりの解答を探るという思考力型が一般的です。
 これは公立中高一貫校が入試で実施している適性検査のスタイルを真似て作られており、公立中高一貫校を目ざす生徒も受験できるよう配慮した結果です。
 中学入試で適性検査を始める学校が多い理由は、今後の大学入試の新テストで似たような形式の試験が行われることが決まっており、適性検査を中学入試段階から受験しておくと、将来、有利となるからです。
 「新タイプ入試」には、ほかにも「自己アピール(プレゼンテーション型)入試」や「プログラミング入試」などのユニークなタイプの入試を導入する学校も徐々に増えつつあります。これらの入試を実施する背景には、筆記試験だけでは測れない子どもの潜在能力や資質を評価したいという考えがあるからです。 


新タイプ入試の「プログラミング入試」 求められる能力とは?

 今年の入試では「プログラミング入試」を、聖和学院八王子実践の2校が導入しました。既存の大妻嵐山相模女子大駒込聖徳学園の4校に加え、全部で6校が実施しました。
 この2020年4月から実施される新しい学習指導要領では「、情報活用能力」を「学習の基盤となる資質・能力」と位置付け、「プログラミング教育」が小学校で必修化されるので、今後、入試にプログラミングを取り入れる中学校の増加が予想できます。
 これらの入試では、単純に受験生のプログラミング能力の程度を測るのではなく、簡単なプログラムを作成する過程で、受験生の「物事を論理的に考え、課題を発見する力」やそれを「解決する力や発想力」などを合否の判断基準としています。
 入試に先立って、プログラミングそのものに興味を持つ児童に対し、プログラミング体験教室を開催している学校もあるので、興味がある受験生は要チェックです。


国際化をめざす教育方針がひとつのキーワードに!

 前述したIBプログラムを私立中学で導入する学校は増えていますが、ここにきて、「ラウンドスクエア」という国際的な連盟に加盟する学校も増えつつあります。これはIBプログラムの創設者が、次世代の国際的リーダーを養成するために設立した私立学校連盟で、世界中で50か国、180校以上の学校の生徒がネットワークをつくっています。
 日本では玉川学園八雲学園啓明学園が加盟しており、工学院大学附属も現在、加盟申請中です。
 また、カナダと日本の両方の高校の卒業資格を得ることができる「ダブルディプロマ」というプログラムを文化学園大学杉並がすでに取り入れています。
 今年の入試から、麴町学園神田女学園国本女子が本プログラムの導入を開始しました。このようにグローバル教育のプログラムを導入する学校は今後、人気が上がることが予想できます。

2020年入試を乗り切るために
北一成先生からのアドバイス!

来るべき新しい社会で “わが子が活きる”学校選びとは

 首都圏の私立中学入試はとても速いスピードで進化・変化しています。いうまでもなく、大きく変化する将来の社会で求められる力の変化と、「大学入試改革」への対応が最も大きな要因です。
 しかし、大学入試で「勝つ」ということよりもずっと先の、“受験生のポテンシャル”が「中学入試」で測られるようになってきているともいえます。
 来年、中学入試にチャレンジする児童が社会人となるのは2030年。AIも、グローバルも当たり前すぎることとなっていることでしょう。
 わが子が、そのような社会で活躍できる人間となってゆく、その過程のひとつでもある中高6年間の教育環境を選ぶ際には、わが子の「個性」が存分に伸びてゆけるような環境であることをぜひ考慮しましょう。
 たとえば、先述のプログラミング入試や、プレゼンテーション型入試、聖学院の「ものづくり思考力入試」など、保護者としては不案内であったり、手出ししづらい分野でも、小学生は素早く順応したり、意外な能力を発揮して伸びを見せることも大いにあります。
 4教科や2教科の力では測れない、何かに特化した力を持つ子どもへも、積極的に光を当てようという中学校の姿勢が、「中学入試の多様化」に現れているといえます。


プロフィール

北 一成(きた・かずなり)

中学受験界でのキャリア35年。日能研、みくに出版『進学レーダー』編集局長等を経て日本Web学校情報センターを設立。学校選びと合格へのアドバイスには定評がある。




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