2016-03-10

スタジオキャンパス代表・矢野耕平先生インタビュー
うちの子、中学受験に向いていますか!?
~子どもの成長を阻む親にならないために~


我が子が中学受験に向いているのか否か、判断に悩む保護者の方も多いことでしょう。今回お話をお聞きしたのは、『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』という保護者としてはドキッとするようなタイトルの本も執筆されている、中学受験学習塾「スタジオキャンパス」代表・矢野耕平先生です。どのような子が中学受験に向いているのか、その適性を育てて伸ばすためには、親は何をすれば良いのかについて伺いました。





子どもの障壁を取り除いてやるのが親の務め?

まず第一に、子どもの性格や特性の大部分は、親がその子にどう接してきたかに起因します。ですから、「中学受験に向く子・向かない子」というよりは、「中学受験に向く親・向かない親」というほうが現実に即していると思います。

そして、いわゆる「中学受験に向く子」というのは、知的好奇心や意欲が旺盛で吸収力があり、自立した子ですが、そのような子は中学受験に限らずどんなことにでも一生懸命に取り組むことができ、伸びていきます。一方、親に依存し、自分で考える力や行動する力がない子は、伸びません。両者の違いを生むのは、親の接し方なのです。

例えば、子どもの目の前に石が落ちているとしましょう。危ないからと親が先に除けてしまうと、危険は回避されますが子どもは何も学びません。一方、石につまずいて転んだ子どもは、痛い思いをしても立ち上がり、「転ぶと痛い。今後、足下には気をつけて歩こう」と、経験から学びます。子どもの成長には、こうした負の経験も必要なのです。それを親が排除してしまうと、子どもの思考は停止してしまいます。そして結果として、意欲がなく、壁を乗り越える力や転んでも起き上がる力がない子になってしまうのです。

中学受験というのは、困難に立ち向かう力、考え悩み抜く力、失敗を乗り越えて成長していく力を習得できる絶好のチャンスです。そして、こうした力は、生きていくうえで不可欠なものです。中学受験にはメリット・デメリットがそれぞれありますが、これは最大のメリットだと言えるでしょう。偏差値の高い中学校に合格することは、いわば副産物なのです。我が子の中学受験を検討される方は、まずそのことを頭に入れておいてください。





子どもを一人の人間として尊重し、見守る

知的好奇心も意欲も考える力も、軸となるのは「自主性」です。子どもの自主性を育てるためには、親は一歩引いて見守り役に徹する必要があります。人間関係でも勉強でも、子どもの問題に介入しすぎてはいけません。悩み、葛藤しながら自らの手で解決していくことで、子どもは大きく成長するのです。手出し・口出しをしたくなる気持ちはわかりますが、そんなときはグッと我慢して、役者になったつもりで「親」を演じてください。

子どもとの距離と同様、コミュニケーションの取り方も大切です。よく「子どもの目線に立って話す」と言われますが、私は子どもを子ども扱いしすぎないことも重要だと考えています。親以外の大人と接する機会を積極的に持つべきですし、言葉についても、あえて大人が使う言葉をそのまま使ったほうが良いでしょう。すると子どもは、会話の中の単語をわからないなりに推測しますし、そのときにはわからなくても後で知識と結びついたりもします。見聞きした言葉のストックが多ければ多いほど、将来的に語彙を増やすことができるのです。

一方、勉強については、子どもと同じステージに立ち、「親子で一緒に学び、喜びを共有する」という姿勢がいいと思います。基本的に子どもは知的好奇心のかたまりです。「○○って何? どういう意味?」と続々発せられる『なぜ・なに 攻撃』には、「一緒に調べてみよう、やってみよう」と応じましょう。学ぶことは楽しくエキサイティングなことです。学びにより、新しい世界が広がります。子どもの学習意欲を高めたいのであれば、親自身が楽しく学ぶ姿を見せることが何より効果的なのです。


「教わり、育つ」教育には、待つことが必要

子どもの意欲や自主性を伸ばすには、親は見守り役に徹すること、子どもを子ども扱いしないこと、子どもと共に学び喜ぶことを挙げましたが、親自身の中学受験に対する思いについても、触れておきたいと思います。

それは、深刻に捉えないこと。たかだか中学受験、人生の一通過点に過ぎません。親の狭い価値観を子どもに押し付けるくらいならば、中学受験なんてしない方がいいと私は思います。合格・不合格の結果よりも、そこまでの努力の過程やその中で身に付けた力が重要なのです。我が子の受験に向けて熱が入るのはわかりますが、自分を抑えられる冷静さが、保護者には求められるのです。

「自ら教わり育つ、たくましい人間の創造」。これは、私が代表を務めるスタジオキャンパスのコンセプトです。「教育」というのは、「(親・教師が)教え、育てる」ものではなく「(子どもが)教わり、育つ」ものだと私は考えています。自らの手で世界を切り拓くたくましさや自主性を引き出し伸ばすことが、親や教師の役割なのです。そして、教育には『待つ』姿勢が大切です。子どもが教わり育つためには、時間がかかり、伸びる速度も度合いもタイミングも、子ども一人ひとりで異なります。情報が氾濫する現代は、周囲に流されず、我が子の成長を気長に見守るという覚悟が必要な時代なのかもしれません。





親子で本を読むこと、書くことから始めよう

最後に、これから中学受験を検討される保護者の方に、ぜひなさってほしいことが二つあります。一つは、子どもと一緒に本をたくさん読むことです。幼い頃からたくさんの絵本に触れてきた子どもは、語彙力、読解力、表現力に加えて、コミュニケーション力も豊かです。それは、物語を通して自分とは異なる立場を疑似体験し、他者を思いやる気持ちを育んできたから。私はなかでも、日本の昔話や民話を推奨しています。普段は使わない言葉や日本語特有の細やかな表現に触れるとても良い機会になります。また、昔話や民話には、歴史や地理をはじめさまざまな教養が含まれ、自ずと知識も身に付きます。

そしてもう一つが、交換日記でも手紙でもいいので、普段の生活の中で「書く」機会を持つことです。今の子どもを見ていると、本当に書く力が低下していると感じます。答案や手紙など誰かに読んでもらうものを書くときには、ただ自分の意見や思いを表現するだけでなく、読み手の立場に立ち、わかりやすく説明したり伝えたりしようとする力が必要です。SNSやメールなど、応答スピードが求められる現代のコミュニケーションにおいて、思いを伝えるためにはどうすればいいか、じっくり時間をかけて考え、書くという経験を幼いうちにしておくことは、大変意義のあることだと思います。

子どもの吸収力を決めるのは、個々が持つ器の大きさです。そして、中学受験の勉強を始めるまでに、その器を大きくしておくことが大切です。子どもが学ぶことの楽しさを実感できるような機会をたくさん持ち、意欲の芽吹きを温かく見守ってほしいと思います。



■ 矢野耕平先生 プロフィール

1973年東京生まれ。大手塾に十数年勤めたのちに、2007年、中学受験専門塾「スタジオキャンパス」を設立し、代表に就任。東京・自由が丘と三田に校舎展開している。また、学童保育施設「ABI-STA」特別顧問も務める。 著書に『カリスマ講師がホンネで語る 中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『iPadで教育が変わる』(マイコミ新書)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)がある。4月20日に新刊『LINEで子どもがバカになる 「日本語」大崩壊』(講談社)が発売される。

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