2015-04-16

【連載】編集部注目の学校 徹底レポート
広尾学園中学校・高等学校

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グローバル化やIT化など急速に変化する社会環境の中で、今後は仕事のあり方や内容が変わる可能性は大きい。従来の学校教育をわが子に受けさせるだけでは、世の中の変化に対応できないと危機感を抱く保護者も多いはずだ。

子どもの将来のために真摯に向き合い、時代の変化とともに改革を続けている学校の一つ、東京都港区の広尾学園中学校高等学校をパスナビ編集部が1年間を通してレポートする。



生き残りをかけた学校改革への道

広尾学園は、大正7(1918)年に板垣退助(伯爵内務大臣)と夫人絹子らが創立した90年以上の歴史を持つ伝統ある私学だ。

ここ数年で、校名変更、校舎の新設、共学化、進学校化、インターナショナルコースや医進・サイエンスコースの開設によるカリキュラムの革新、いち早くICT教育を導入するなど、常に進化と革新を続けている。近年は大学進学実績も伸びており、進学校としても注目されている。

順風満帆に見えるこの学校は、廃校寸前まで追い込まれた歴史があった。1990年代後半から首都圏の生徒人口減少の影響により、広尾学園の生徒数も減少し続け、2000年代に入ってからは現在の約1/3の500人台まで落ち込んだ。崖っぷちに追い込まれたが、2005年から教職員一丸となった改革がスタートしたのだ。

連載の第一回目は、大転換を成し遂げ、進化を続ける広尾学園の強さの理由に迫る。2005年から学校改革と広報戦略を担当された教務開発部統括部長の金子暁先生に伺った。


教員が難関校入試問題を解く

本校の学校改革のポイントは「授業」と「学校説明会」を変えたことだと思っています。

まず、「授業」についてお話します。お恥ずかしいことですが、共学化になる前の女子校時代は、指定校推薦で名門女子大学等に合格させることばかりに力を注いでいました。主に、論文や面接指導中心の進路指導をしていたので、難関大学の入試問題を理解している教員はほとんどいませんでした。

このままでは進学校としてふさわしい授業をできるわけがありません。大学受験に関する知見を確かなものにするために、教員自身が大学入試を解く研修が必要だと感じました。そこで「入試問題研修」が導入されました。

この研修では、専任の教員一人ひとりが自分の教える科目の国公立・早慶レベルの大学の入試問題を実際に解きます。先生自身が入試問題の過去と現在の傾向を分かるようになるため、精神的に余裕ができ、かつ自信を持って教えられるようになりました。


教員研修は、年に3回、長期間実施しています。さきほどの「大学入試研修」と「授業研修」の二本柱で構成されており、2006年から現在まで続いています。教員研修の目的は、「授業の質」を高めて生徒を力強く導くことです。

「授業研修」では、教員が生徒役になって、次々と模擬授業を行います。一人が終わると、その都度ディスカッションをして授業の構成など深く議論し、延々と繰り返します。生徒の視点からの評価を持ち込んだ模擬授業を実施し、常にモチベーションの高い授業を目指しています。

研修に反対する教員はおらず、むしろ教員の提案により実現した研修でした。教員たちが自分のプライドをかけて改革に臨むしか学校存続の道はありませんでした。


世界最高ホテルに学ぶ、おもてなしの心に溢れた「学校説明会」

学校改革のもう1つのポイントは、学校説明会での教員の接遇を変えることでした。いかにも教員っぽい対応の説明会はやめようと教員同士で話し合いました。

最高のサービスを提供するホテルの一つとして、当時世界中から注目されていた「リッツカールトン」のサービスに近づけようと、ある教員から提案がありました。おもてなしとサービス精神を持って来場者に対応し、「学校に行って良かった」と思われる説明会にするのです。

この「サービス精神」と「授業」はリンクしていると思います。つまり、相手のことを考えると、「もっともっとこうしなければ」という改善の意識が沸いてきます。そして、保護者に対しても生徒に対しても丁寧になり、相手のことを真摯に考える姿勢になります。

学校改革がスタートした当初は、保護者が塾の先生に「広尾学園はどうですか?」と尋ねると、「数年間は様子を見たほうが良い」という回答だったと聞いたことがあります。しかし、実際の学校説明会に来た保護者の「行って良かった」という声が多くなってきたために、塾の先生も対応を変えざるを得なかったようです。

こうして、説明会に来る人数は飛躍的に増え、2014年度は年5回の実施に6,250人が来場されました。


超一級のキャリア教育プログラムを創設

2008年頃は、広尾学園には文化祭や体育祭など大きな学校行事はありましたが、それ以外の課外の特別プログラムがほとんどありませんでした。女子校から共学校になり、適用できないプログラムもありました。

これではいけない、ということに気づき、国内外の教育的プログラムを必死に調査して研究を重ねました。調査するにあたり、「他校の真似だけでは駄目だ。これからの時代を生きる生徒たちには何が必要か」を問い続け、何が今の学校や教育活動に欠けているかを考え続けたのです。ですので、キャリア教育といいましても、職業教育的な限定された範囲ではなく、「従来の枠を越えた価値の高い教育活動」のすべてをキャリア教育と呼んでいます。

そして、2009年に1年分のキャリア教育プログラムのスケジュールが完成しました。これは現在のプログラムの骨子になっています。


「広学スーパーアカデミア『最先端と最前線の超一級講座』」では、ロボット工学、スーパーコンピュータ開発、宇宙開発、生命環境科学、脳科学、医学、異文化コミュニケーション学などさまざまな分野の一流講師に講演をしていただきます。中には厳しいお話をされる方もいます。

一流の方のお話を聴くと、私たち教員や学校の枠をはるかに越えたスケールで世界は動いていることを痛感します。その大きなスケールを、中高生の早い時期から接してほしいと思っているため、キャリア教育は中1から実施します。

また、生徒は一人ひとり成長過程が違いますので、教員の計算どおりに成長しません。ですので、学年に応じた画一的なキャリア教育プログラムは組んでいません。


キャリア教育だけでなく、様々な教育活動をできるだけ早い段階で体験してほしいと考えています。たとえばDNA鑑定講座です。

参加する中1中2を中心とする生徒たちは、高度な実験を経験した後に、医進・サイエンスコースの上級生のサポートを受けながら、英語の学術論文を読み解いてプレゼンテーションをします。この講座では、大学院レベルの研究活動を早期に見せることを目的としています。大学受験よりも先のことを早い段階で生徒に見せることで、今後の学ぶ姿勢や考え方が変わる効果が出てきていると感じます。

たくさんの経験が今後どのようにつながるか分かりませんが、ある1つの体験がその先につながることはあります。それがいつ自分に起こるのか、いつ気づくかのかは誰にも分かりません。そのための環境と機会を、学校が豊富に提供しています。



連載の第2回目以降は、実際の授業の様子や学習指導体制、在校生や教員の生の姿、ICT教育の実態など広尾学園のリアルな姿を編集部が取材します。次回は5月下旬頃に掲載予定です。また、広尾学園からの新しいニュースも続々と掲載しますので、引き続きご期待ください。




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