2015-05-28

【連載】編集部注目の学校 徹底レポート
広尾学園中学校・高等学校

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10年前から教職員一丸での学校改革に取り組み、進化を続ける広尾学園。この春には、中学校に300名、高校に275名の新入生を迎え、校内はますます活気に溢れている。 連載の第2回目・3回目は、広尾学園の特徴でもある「医進・サイエンスコース」「インターナショナルコース」の教育内容と魅力について伺った。


第2回 医進・サイエンスコース

医師や研究者の育成を目的として2011年に高校に医進・サイエンスコースが設立され、今年度より中学にも同コースが設置された。現在、13名の専任教員が、化学、生物、物理、数学、英語の各教科に対する高度な知識を武器に指導に熱を入れている。中には、大学院で専門研究に取り組み、博士号を持つ教員もいるというのだから驚きだ。マネージャーとして同コースを率いる木村健太先生が語る。


「私も大学では分子発生学の研究に取り組み、研究者を志していました。ただ一方で、日本の中等教育に対する疑問がずっと拭えずにいたのです。それは私自身が高校時代までの勉強に楽しさを見出せず、大学での研究活動を通じて初めて学ぶことの面白さに目覚めたことが関係しているかもしれません。

また、大学の研究室でも、教授の指示を待つだけで自主的に研究に取り組めない学生の姿を見てきました。そこで、日本の中学、高校における理系教育の在り方について危機感を覚えるようになり、教員の道に進むことを決意したのです」


当時、広尾学園は学校改革に取り組み始めたばかりの頃。木村先生が理系教育に対する高い志を訴えたところ、学校側からは「あなたのような人材を求めていた」と賛同の声で迎えられたという。このエピソードからも、広尾学園が改革にかけた意気込みが伝わってくるだろう。

発足から4年とまだ歴史は浅いものの、すでに東大、東工大をはじめ国公立大学に多くの卒業生を送り出している医進・サイエンスコース。ただ、「大切なのは偏差値の高い大学に行くことではなく、希望する研究が行える環境を選ぶこと」だと木村先生は表情を引き締める。


『社会で活躍する力』を育成する三本柱  「授業」「研究活動」「中高大・産学連携」

「医進・サイエンスコースが目指すのは、『社会で活躍する力』を育てること。もちろん受験対策も行っていますが、生徒の人生は大学入学がゴールではありません。大学進学後、ひいては社会でも求められる人材となるために、思考力を鍛え、自らすすんで課題に取り組む姿勢を中学高校の6年間で育成したいと考えています」

その理念を体現するため、医進・サイエンスコースでは「授業」「研究活動」「中高大・産学連携」の三つを柱としたカリキュラムが組まれている。

一つ目の柱である「授業」では、『どの教科を学ぶか』ではなく、『何を学ぶのか』を意識し、教科の枠にとらわれず、本質的な思考能力を養うことを重視しているという。

「そのため、授業は教員が連携を取り合って教科横断型で行っています。たとえば、世界史の授業で古代の数学者について学ぶ際には、世界史の教員よりも数学の教員の方がより生徒が興味を持つような話が出来る。ですので、授業中に数学の教員が登場するといったことが頻繁にあるんですよ。また、研究活動を行う上では英語で書かれた学術論文を読むことが求められるため、英語力の育成にも注力しています。

その他、研究活動では世界中の新しい情報に触れる必要があるので、生徒は一人一台Chromebookを所有し、日常的にICTツールを活用。必要な情報を自らすすんで調べ、教員との情報共有を図ることに役立てています」

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では、二つ目の柱である「研究活動」はどのように行われているのだろうか。

「高校での研究活動はあくまでも授業外なので任意での活動ではありますが、ほとんどの生徒が参加し、3~4人のチームごとにテーマを決めて研究を進めています。テーマ設定の条件は、『世界の誰も分かってないこと』。生徒には難しいと思われるかもしれませんが、結果よりも課題にアプローチする手法を学ぶことを重視しているためです。

また、高校1年次には1人1本英語の研究論文を読むのですが、その際も、読むためのツールは教示しても、あえて読み方そのものは指導しません。すべては、生徒の自立的探究心を育てるためです」


最先端の現場で“本物”に触れる機会を提供する

さらに、三つ目の柱である「中高大・産学連携」では、研究所などの専門機関へ訪問し、医療や学術分野の第一線で活躍する人々の生の声を聞くチャンスも設けられている。これらのプログラムは、「“本物”の現場を知ってほしい」という教員の熱い思いから生まれたものだ。

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「近年では京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥先生や、Google社のエリック・シュミット会長とのディスカッションが実現しています。世界で活躍するトップランナーたちが何をしているか、どのように考えているかなど彼らの感性に触れることで、生徒たちの発想のスケールが変わります。話を聞くだけではなく、大学との連携によって生徒が自らの研究活動を大学の卒論発表会で披露する機会も設けているんですよ。

昨夏には、米・スタンフォード大学にて研究成果を英語でプレゼンした生徒もいました。高校生相手であってもリスナーから容赦なく質問が飛ぶのですが、世界の研究の舞台を肌で感じる貴重な経験になったと考えています」


最近では、海外の教育機関が視察に訪れるほど注目を集めている医進・サイエンスコースだが、ここまでの発展を遂げたのは、企業や大学の協力、何よりも生徒たちの力があったからこそだと木村先生は語る。

「もちろん私たち教員も、『自ら学びたいと望む生徒には、日本一の設備と機会を提供する』という意志のもとに、時代の動向に応じてプログラムを組むなど努力を惜しみません。しかし、これらのプログラムが生きているのは、生徒たちが主体的に考え、行動しているからこそ。そういった意味では、“生徒が作ったコース”と言うべきかもしれません。

生徒たちには、単なる学力を超えた“学び続ける力”を養い、将来的にその力を社会のために役立ててほしいと願っています」




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