2016-01-07

【連載】編集部注目の学校 徹底レポート 広尾学園
最先端のICT教育現場を大公開! 広尾学園ICTカンファレンス2015(前編)

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2015年12月15日に行われた「広尾学園ICTカンファレンス」は今年で3年目を迎える。ICT教育で最先端を走る広尾学園の取組みが情報共有される場とあって、約200名もの教育関係者・報道陣が集まった。


広尾学園ICT教育全体の様子

午前は医進・サイエンスと本科コースの公開授業、午後はITジャーナリストとして名高い林信行氏と21世紀型の新たなものづくりに挑戦しているファブラボ鎌倉代表渡辺ゆうか氏の講演、生徒・教員のパネルディスカッション、教員からの実践報告会、質疑応答など充実したスケジュールだ。

中高パスナビでは、カンファレンスの模様を前編後編に分けてレポートする。(後編はこちら

ICTを活用した授業を公開!

まず注目を集めたのは、医進・サイエンスコースの中学1年生による進捗報告会の様子だ。2015年4月、中学に新設されたばかりの同コースは、中学段階で「理数研究」を進めている。入学して約半年間かけた研究の成果と現状を報告した。

この日の報告会では高校1・2年生も参加。中学生の発表に対して高校生と教員が質問・アドバイス等をして学びを深めていた。「幹細胞・植物」「数論・群論」「燃料電池・光触媒」の3グループに分かれ、ゼミ形式の授業を展開した。


プラナリアの再生

《幹細胞》 プラナリアの再生に中心的な役割を担っている全能性幹細胞の性質を明らかにするために調べている。論文を読み、参考にしながら研究を進めているそうだ。


フロリゲンの働き

《植物》 花を咲かせるホルモンであるフロリゲンの働きを、花芽形成の過程とともに説明している様子。


イデアル

《数論》 イデアルについての研究。整数式がaの倍数全体の集合を(a)と置き、イデアルの要素を整数に限定するとI=(a)が成り立ち、aはIに含まれる最小の正整数であることを証明している。


燃料電池

《燃料電池》 燃料電池のなかでも固体高分子形燃料電池(PFFC)とリン酸型燃料電池(PAFC)の研究に向けて、簡易的な実験をした結果を発表。



■ 中学1年「社会」授業 「CMをつくろう!」

CMをつくろう

ターゲットとテーマを決めて、生徒たちで広尾学園のCMを作成する授業だ。事前に集めた素材をもとに、授業時間内にiMovie(動画編集ソフト)を用いて編集作業を行い、発表した。

CMをつくろう発表会

広尾学園を志願する受験生と保護者に向けて、校舎やICT教育の様子を発表するチームが多かった。自分たちでナレーションを入れるなど、各々で工夫を凝らしていた。



■ 高校1年「英語表現I」授業 「共有ファイルでのダイヤログ作成」

CMをつくろう発表会

生徒がペアになり2分間のスピーチの台本を作成する。
生徒たちがGoogleドキュメントで台本を作成して共有しているため、先生がリアルタイムに内容を確認できる。完成した台本をもとにスピーチの練習をして、全体に発表していた。



■ 高校1年「国語(現代文)」授業 「日本語は本当に退化しているのか?」

国語(現代文)

ロイロノートのアプリ等を使用して、本文読解を中心に進める。その後一人ひとりに意見文を書かせて、ロイロノートで意見集約、全員で共有した。


生徒たちのリアルな意見に注目!パネルディスカッション

広尾学園は全生徒が電子端末を購入しており、本科コースはタブレット端末「iPad」、医進・サイエンスコースはノートPC「Chromebook」を利用している。学校でどのように利用し、生徒たちはどう感じているのか――。午後のパネルディスカッションでざっくばらんに語られた。

国語(現代文)

コーディネーターを務めた医進・サイエンスコースマネージャー木村健太先生から、「一人一台の端末を持つことの良い点と悪い点について」という質問があった。

良い点として、「情報の伝達や共有が楽になった。例えば、各クラスにホームページがある。伝達事項は後でも確認できる」「情報の世界が広がり、新しいところに目が向くようになった」「授業中に分からないことがあれば、すぐに調べられて友人と共有できる」「医進・サイエンスコースはプレゼン用の資料を作る機会が多いため、個人でも集団でもプレゼン用の資料を作り上げられる点が便利」 「生徒からの回答をすぐに先生が集計して、教室内で情報共有できるアプリやシステムを利用している授業がある。生徒一人ひとりにすぐに反応してもらえる」 といった意見が挙がった。

一方の悪い点は、見事に全員が同じ認識であった。それは、「中学生は学習中に関係ないページを見てしまう」「端末を家に持ち帰った後、自分の興味で使ってしまう」といった、勉強の目的とは関係ないことに端末を使ってしまうことだった。

「学校の電子端末には機能制限がかかっているため、自由にアプリケーションは入れられない。コンテンツフィルタリングも設定されているため、危ないサイトは見られないようになっているが、裏の手を使えば見えてしまう可能性もあるため、何とかすべきだ」という生徒の意見に対し、ほかの生徒からは「先生たちが生徒に“端末を見ないように”と言っても、規制は難しい。生徒自身が考えることが重要で、考える機会を与えていただき、実際に運用に活かしたい」という提案が出された。

このほか、来場者から「端末を使う授業とノートを使う授業は、どちらが記憶に残りやすいか」という質問が挙がった。これに対し中1生から「科目によって違う。理科や数学は、本質を理解するためにイメージが大切なので図やグラフがあると分かりやすい。英語の授業は記憶することが多いため、ノートに書いて覚えるほうが良い」という回答があった。


これからの教育はどう変わるべきか ~林信行氏 講演~

ITジャーナリスト、コンサルタントの林信行氏が登壇した。林氏は90年代からインターネットに関するトレンドについて執筆活動を続ける。2008年頃から企業を対象に経営コンサルをしており、“これからの時代に求められている能力は以前とは違うのでは……”と感じ、教育分野に関心を持ち始めた。

林氏は「広学スーパーアカデミア『最先端と最前線の超一級講座』」で、“ITが世界をどのように変えているか“をテーマに3年連続で講演をしている。 前回は「人工知能」をテーマに、「2045年頃に人工知能が人間の知能を超える」という説を取り上げ、これからの生徒たちが社会に出る頃には、今は存在しない職業が発生するであろう未来を生徒たちと考えた。

農業や水産業、医療、ファッション業界など多業界で、ITテクノロジーとスマートディバイスの躍進によって世界を変えている最新事例の数々を紹介された。例えばファッション業界では、家庭用3Dプリンターで服を作ったり、全国の縫製工場をネットワークでつなげて自分がデザインした服を一着からオーダーできるサービスなど、様々な取り組みをしている。

教育現場の事例として、障害でうまく話せない人の声の特徴を学習し自然な人の声で発音してくれるアプリや、読み書き等の能力に困難な人たち向けに、ハイライトされながら読まれる電子書籍など紹介された。

林信行氏講演1

「20世紀は大量生産・大量消費社会でしたが、これからはITテクノロジーを使って、一人ひとりのニーズに合わせたものを提供できる時代が訪れます。人間性にフォーカスされ、適量生産が可能になってきます。

学校現場では、これまでは手を挙げる生徒しか授業に参加できなかったのが、ロイロノートのようなツールで生徒が一斉回答、すぐに確認できるようになりました。顕微鏡で見えるものをiPadで撮影してプレゼンテーションし合う使い方もあります。また、反転授業にも活用できます。今の時代は、生徒が先生よりはるかに知識を持っているのが当たり前となっています。そういう時代に、生徒に教えるべき価値とは何か――」と会場に問いかけた。

林氏の考えは、“自分たちが世界を変えられる”と、実感をもって生徒たちに与えてあげることだと話す。「医進サイエンスコースの研究テーマは、『世界の誰も分かってないことをやる』である。高校生にチャレンジさせて、出来てしまうのは凄いことです。生徒をモチベートしてあげることが重要」と続けて語った。

林信行氏講演2

21世紀型イノベーションで無視できない考え方として、「否定せず議論を進める」、「失敗は成功の元(むしろ失敗したほうが良い)」、「アジャイル型開発」を挙げていた。これらを早いタイミングで体得させれば経験値がどんどん上がる、とのことだ。


デジタルファブリケーションとこれからの教育 ~渡辺ゆうか氏 講演~

3Dプリンタやレーザーカッターなどデジタル制御された工作機械が安価になり普及し、ものを作る人と使う人が一体化し始めている。「ファブラボ」は、デジタルからアナログまでの多様な工作機械を備えた実験的な市民工房のネットワークを指し、世界70カ国500ヶ所以上に広がっている。自分たちでものを作り、デジタルデータを世界中で共有し、アイデアを共有している。オンラインで全世界のラボとつながっているのが特徴だ。

広尾学園の校内には「ICT Room」というものづくりのスペースがあり、3Dプリンターやペッパーカッターなどのデジタルファブリケーション機器が設置されている。現在、生徒が放課後に自由に使うことができる「Fabスペース」として準備を進めている。2015年12月12・13日には、アジア初となるものづくりの国際会議「FAB LEARN ASIA 2015」が開催され、広尾学園から15名の生徒がスタッフとして参加。さらにファブラボ実践校としてプレゼンもした。

渡辺氏講演1

登壇された渡辺ゆうか氏が代表するファブラボ鎌倉では、人材育成事業を積極的に行っている。例えば、子供から大人までの幅広い世代を対象に「朝ファブ」を開催している。「朝ファブ」とは、月曜日の午前9時にファブラボ鎌倉に集まり歴史的建造物のメンテナンス(草むしり、ゴミ拾いなど)に協力した後、参加者は機材を交代して利用できる活動の場だ。ここでものを作り、発表している。10回以上参加されている方は、自身がスタッフとなり運営をフォローしてくれているそうだ。

「定期的にこういう場所が開かれていて、通える場所がある。イベントではない落とし込み方で“100回通えるシステムは何か”を考えて運営しています。」と渡辺氏は語る。

「これからの人材をどう育成するか」というテーマでは、いくつかの取り組みを紹介された。例えば、全くものづくりの知識が無い人でも作れるように「Fab Academy」というオンライン授業講座がある。これは、MIT(マサチューセッツ工科大学)と同じスケジュールで組んでおり、通常であれば6年以上かかる授業内容を約3か月間に凝縮し、世界各地のファブラボをビデオ会議システムで結んでいる。

さらに、ファブラボ鎌倉で培った体系的なプログラムを広く社会へ展開するために、渡辺氏は「国際STEM学習協会」を2015年7月に立ち上げて代表理事をつとめる。「ファブリケーション、WEBとモノをつなげるフィジカル・コンピューティング、プログラミングを組み合わせた学習やグローバルなネットワークを通じて、アイデアをカタチにできる環境整備、知識の共有、変革を起こす技術や手法を用いて国際的に活躍する人材の育成」を目指している。


渡辺氏講演2

「今後は、海外の情報を提供しハイスペックな教育を提供できるよう、次の未来に向けた準備をしていきたい」と語る。


後編では、教員からの実践報告会と先生方の質疑応答の模様をレポートする。《中高パスナビ編集部》




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