2017-07-27

【連載】編集部注目の学校 徹底レポート
第10回 広尾学園理事長 池田富一先生にインタビュー

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社会の変化は、子供たちの未来の変化でもあります。目まぐるしく変わる環境に合わせて改革と成長を続ける東京都港区の広尾学園中学校高等学校

記念すべき10回目となる徹底レポートでは、池田理事長に学校の魅力をたっぷりと伺いました。


広尾学園理事長先生インタビュー

広尾学園を語る上で欠かせない2つのキーワード

――本日はよろしくお願いいたします。


よろしくお願いします。


――まずは自己紹介からお願いできますでしょうか。


広尾学園の理事長をしております、池田富一と申します。

実は私は生え抜きの教員というわけではなく、前職はモノを扱う一般企業におりました。


――前職と現在とで違いを感じられますか? それとも、根本は同じなのでしょうか。


いえ、モノを扱うということと人を育てるということでは全然違っています。

モノを扱う仕事にももちろん重い責任がありますが、人を育てるのはそれとは比べ物にならない重責を担う仕事であるとしみじみ違いを感じていますね。

生徒たちの現在、そして未来、更には周囲の人にまで関わってくることですから、責任の範囲は桁違いです。

しかし、それだけに生徒が育って立派になり、社会で活躍していると知ったときはとても嬉しいですし、先生のおかげですと感謝してもらえたときの喜びなどは他の何にも代えがたいものです。

それに、これまで異なる分野で仕事をしてきたからこそ、「教育現場の常識」といった枠に囚われず新しいことに挑戦していけるのだと思っています。

この挑戦、「チャレンジ」は広尾学園が大切に掲げている信念の一つですね。


――新しいことに挑戦されるということですが、広尾学園が目指していく姿を教えていただけますか?


私たちが理想とする学校のあり方でよろしいでしょうか。

私たちは生徒がどのような分野へを目指したいと思っても、その道の「プロフェッショナル」が指導をしてあげられる、そんな学び舎でありたいと考えています。

医進・サイエンスコース、本科コース、インターナショナルコースの3つがあり、幅広い選択をすることができます。

先ほどの「チャレンジ」に加え、「多様性」もまた広尾学園が大切にしているものです。


特徴あるコース

――医進・サイエンスコースとインターナショナルコースについて詳しく教えてください。


<医進・サイエンスコース>

医師、研究者を目指す人のために医系大学や理系大学への進学を目標として学ぶコースです。

ただし、単純に医学部や理系学部の大学入試対策をするといったようなことではなく、本物に触れるということを大事にしています。つまり、机上の学習だけではなく、外に出ていって最先端の研究を行っている当事者に会う、その研究施設を見る、といったような活動ですね。まさに百聞は一見に如かず。「本物」に出会い、触れることは、どれだけ机の前に座っているよりも学びへのモチベーションを上げてくれます。

2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥教授にも、京都大学iPS細胞研究所まで行ってお話を伺いました。まさに最先端、世界最高峰の研究者に、その研究フィールドへお邪魔して直接お話していただくことができたのは生徒たちにも非常に良い刺激になったと思います。

病院の手術室や、術前カンファレンスに入れてもらい中を見学することも実施しています。中学生、高校生ではどれだけ興味があったとしても個人では手の届かない世界を学校が見せてあげられるというのは、本学の大きな強みですね。

実物を見ることで、憧れが高まるだけでなく、本当に自分は医師あるいは研究者に向いているのかという土台の部分からより深く考えられるので、学生である間のそういった機会は大いに活用してほしいと思います。


――そのような素晴らしい機会を設けられるということは、広尾学園への社会的な信頼の厚さの証左かとも思いますが、卒業生からの紹介などによるのでしょうか?


卒業生からの紹介という場合もありますが、最も多いのは医進・サイエンスコースの教員が作り上げたネットワークを通じて、病院関係者の方や研究者の方から直接声をかけていただく場合ですね。昨年実施した「病理医と乳腺外科医による乳癌診断体験セミナー」は、順天堂大学附属の病院から病理医の先生と乳腺外科医の先生を講師としてお招きしましたが、日本病理学会の方からぜひ本学の生徒に病理医の仕事を知ってほしいとお申し出をいただき、実現しました。プロフェッショナルからぜひと言われる学校であることに、大いなる誇りを持っています。

また、最近ではそれらの評判が医師の先生方の間で広まったのでしょうか、医療関係者、理学の研究者がお子さんを受験させてくださるようになり、父兄から職場を見学しませんかという声もかけていただくようになりました。これからも人と人との繋がりを大切にしつつ、生徒たちに「本物」を体験させてあげられる学校でありたいと思います。


<インターナショナルコース>

その名の通り国際的に活躍できる人物を育てるコースです。強制しているわけではありませんが、日常の会話も英語でしているような生徒が多いですね。


――そういえば、先ほど英語でお友達と笑っておしゃべりをしながら下校する学生さんとすれ違いました。


それはインターナショナルコースの生徒かもしれません。

しかし、インターナショナルコースだけでなく、医進・サイエンスコースでも最先端の研究論文を読みたいと思えば英語で専門用語がたくさん使われている原文を読む必要があります。広尾学園ではどのコースへ進んだとしても、英語を身近に使いこなすことができるようになるようプログラムを組んでいます。

例えば、「オールイングリッシュ実験講座」という授業がありますが、これはインターナショナルコースと医進・サイエンスコースが共同で行うもので、理科の実験を英語のみで行うという内容です。生徒たちは非常に楽しいようで、人気の高い講座の一つですよ。


――外国人の先生が理科の授業をなさるのでしょうか?


そうとは限りません。日本人の先生もこの実験講座の日はすべて英語での授業を行います。


――準備が大変そうですね!


……それは気付きませんでした。いつも先生たちは面白そうに準備をしているので、おそらく苦労もあるかとは思いますがそれ以上に楽しんでいるのではないでしょうか。

広尾学園は、生徒が楽しく学んでいるだけでなく教員もまた日々己を磨くことを楽しみ、活き活きとしているのが特徴の一つと言えるかもしれませんね。

そういえば、先ほど日本人の先生「も」実験講座は英語で行いますと申し上げましたが、外国人の先生も実験講座を担当しています。

広尾学園には外国人教員が21名おり、彼らは外国語授業のみの講師というわけではなく専任の先生ですから、部活も受け持ちますし担任も持ちます。その中には理系科目の先生もいて、日常的に外国語以外の授業を日本人でない先生から教わるのです。


広尾学園理事長先生インタビュー

学校生活とその後

――「オールイングリッシュ実験講座」のように、コースが異なっている生徒たちもコースを越えて交流する場面は多いのでしょうか?


それはもちろんです。

コースが違っても、1年生は1年生、2年生は2年生と基本的な学校生活は学年ごとですから、コースを越えた交流、友情は生まれます。

それぞれ別のコースにいる子たちが互いに影響し合って、新しいことに興味を持ったり、これまで知らなかった知識を深めたりすることもあります。


――それは楽しそうですね。自分とは異なる専門知識を持つ友人から「こういう部分が楽しい」と話を聞くことは、新しい分野を勉強してみようと思う最も良い動機になります。


――さて、では逆に、学年を越えた縦割りでのコース内交流はあるのでしょうか。


その機会も多いと思います。

まず、日常的なことから言えば、広尾学園ではコースごとにフロアを分けています。例えばインターナショナルコースは中学1年生から高校3年生まで6学年が主に9階を使っています。学年が違っても同じフロアを使うので、一緒に生活をしているという感じですね。

また、年間を通じて何度かコースごとの活動も行います。そこで同じコースの先輩、後輩と深く交流できます。医進・サイエンスコースは中高合同で勉強合宿を3月に行いますが、今年の3月に行った合宿では在校生だけでなく大学入学前の卒業生も参加して大変盛り上がりました。インターナショナルコースでは、海外大学の講義を翻訳する活動に高校1~3年生総勢54名で取り組んでいます。


――海外の大学へ進学する生徒さんも多いのでしょうか?


はい。ただし、海外至上主義というわけではなく、海外大学も進路の一つとして視野に入れているということです。

どの大学へ行くかということではなく、将来やりたいことをまず考えて、そのためにはどの国のどの大学で学ぶべきか、という方向で生徒たちは進路を決めていきます。

2年前から海外の大学を訪問する「海外大学ツアー」を始めました。希望者のみ、期間は行き帰り含め約1週間ですので滞在は5日程度という短めのものですが、旅行代理店などに任せているのではなく本学の教員が訪問先の大学や誰に話を聞くかなどすべて手作りでスケジュールを組んでいるため非常に中身の濃いものとなっています。初年度はカリフォルニアで8校訪問し、次年度はボストンで12校を訪問しました。

実際に訪問することにより、生徒たちは、自分がその大学が求める学生像に合っているのか、その大学の雰囲気に自分がいることを想像できるか等を考えることもできます。中には卒業生が在籍している大学もあり、後輩たちに自分は中学生のとき、高校生のときにどのような勉強をどれくらいしていたか、アプリケーション(※1)のためにどういう準備をしたか、といったことについて話してもらいました。自分が好きで通っている大学ですから、誇りを持って良いところを伝えてくれますし、在校生たちも先輩の具体的な合格体験を聞くことができるので憧れが強くなり、また、自分もできるのではないかという前向きなビジョンが見えるようです。

私たち教員も、教えた生徒が立派に成長し、海外で一人暮らしをしながら勉強もがんばっている姿を見ると大変嬉しく誇らしくなります。

ツアーには学年をまたいで参加者がいますが、ボストンのときは中学3年生から高校2年生まで14名が参加し、進路選択の参考にしたようです。


――中学生から既に大学進学のことを考えるのですか!?


憧れの大学を探すということもありますが、中学3年生になると高校のコース選択を控えているので、インターナショナルコースへ行くかどうしようか悩んでいる子が参加していましたね。

どの海外大学を目指すかということは一旦置いておいて、自分がそもそも海外大学への進学に向いているのか、自分が学びたいことは海外の大学で学ぶべきなのか、それらをツアー中に見極めて、やはり海外大学を狙いたいとなればインターナショナルコースが近道になりますし、やはり日本の大学が良いと思えればそれはそれで前進です。


――先ほど医進・サイエンスコースのお話でも「そもそも医師に向いているのかといったところから考える」とおっしゃっていましたが、海外大学についても同じなのですね。「向いていない」あるいは「やめよう」「違う道にしよう」という選択肢もありだということでしょうか。


その通りです。

中学生、高校生のうちはある日突然興味の方向性が変わったり、色々経験する中でやはり自分のやりたいことはこれではないと考えを改めたりすることがあるでしょう。むしろそれは、これまで自分が思いもよらなかった世界に触れることができた証拠ですから、歓迎すべきことです。もちろん、ずっとこれがやりたかったと一貫して自分の姿勢を保つことも素晴らしいですが、変化や方向転換というのは忌避すべきものではありません。


――大人の気持ちからすると、なるべく最短距離で夢を実現させてほしいと思ってしまいそうですが。


そうですね。保護者の方が我が子になるべく苦労しないでゴールを目指してほしいと願われるお気持ちはよくわかります。

しかし、それはあらゆることを既に経験し、自分のことが見えてきた大人だからこその考えだと思います。

子供のうちは、とにかく興味を持ったことには何でも挑戦してみて、自分の可能性を育ててほしい。いくらでも、どのような方向にでも成長できるのですから、それを狭めないでほしいですね。子供たちに「寄り道」や「無駄」はありません。大学合格がゴールというわけでもないでしょう。

そしてこの信念こそが、広尾学園の大切にしている「チャレンジ」であり「多様性」です。本学ではいつでも子供たちの変化に対応できるよう、中学校から高校で違う専門性を持ったコースに移ることができますし、どの選択をしても最先端の教育を受けられるよう万全の準備をして待っています。

教員も、一人ひとり違う進路へ向かう子供たちを育てることが使命だと思っていますので、それぞれ異なる興味を育て、サポートすることに努力は惜しみません。安心してお子さんを預けていただきたいですね。


広尾学園に興味をお持ちの皆さんへ

――御校にぜひ入学したいと考えている小学生、中学生は多いかと思いますが、何か志願者に求める素質などはありますでしょうか。


先ほども申し上げたように、チャレンジする前から子供たちの可能性を狭めるようなことはしませんので、能力的な面で「入学前からこうでなくてはいけない」というようなことは一切ありません。

ただ、強いて言うのならば、「何事にも前向きに取り組むことができる」「失敗を恐れずに新しいフィールドへ挑戦できる」お子さんは広尾学園に向いているでしょう。

本学では、学ぼうと思えばいくらでも学べる環境、機会を提供しています。

生徒たちにはなるべく前向きにそれらを利用し、良いことにも悪いことにも気付いて自分の将来像を固めていってほしいのです。

やってみたけれど思ったのと違った、やってみたけれど思うような結果が出なかった、ということも大切な経験ですから、方向転換も再挑戦も大歓迎です。目標を変えようと思ったけれどやはり元に戻る、というのもありだと思います。それらは逃げや負けではありません。むしろやってみる前からできないかもしれない、良い成績を残せないかもしれない、と考えて尻込みし、自分の可能性を狭めてしまうほうが勿体無いことですね。

身の回りのすべてを活用する貪欲さ、失敗を恐れずチャンスを掴みにいく積極性、それらを持ったお子さんでしたらきっと本学で夢に向かって進んでいくことができると思います。


――最後に一言お願いします。


ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。

やはり、学校を理解していただくにも、文章でお読みいただくのと学校を実際に体感するのとでは情報量が異なります。

こちらの記事で本学に興味をお持ちくださった方には、ぜひ一度広尾学園まで足を運んで設備や生徒たち、教員と触れ合っていただきたいと思います。

何事も「本物に触れる」のが一番ですから。

ご来校いただける機会もたくさん用意しています。

教員からの説明と校内見学を行う学校説明会は月に1回程度、他に一学期の体育祭、二学期の文化祭、三学期の音楽会と学期ごとのイベントも実施しています。これらのイベントは受験生と保護者の方も見学可能ですので、ぜひご来校ください(※2)。

特にけやき祭(文化祭)は、1家族に1名の在校生がついて校内を案内するツアーがあります。在校生と触れ合いたいならけやき祭が最適です。


広尾学園理事長先生インタビュー



※1 アプリケーションとは……アメリカ、カナダなどの大学へ進学する際に提出する書類のこと。願書のようなものだが、日本から提出する場合はウェブの利用が一般的。


※2 体育祭は6月、終了済み。けやき祭は10月、予約不要。音楽会は来年2月、電話にて予約が必要(連絡先 入試広報部:03-3444-7272)。




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