2017-12-26

【連載】編集部注目の学校 徹底レポート
第11回 海外大学の講義翻訳活動

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広尾学園では、毎年インターナショナルコースの高校生から希望者を募り、海外大学の講義翻訳に取り組んでいます。


翻訳対象となる講義はもちろん英語。
そもそも学問的にレベルの高い「大学の講義」を、しかも「英語で聞いて」最終的に映像の視聴者にわかるよう「日本語で表現」するという幾重にも難しそうなこの活動ですが、参加者の皆さんはどのようにして取り組んだのでしょうか?
今回は高校1~2年生を代表してそれぞれグループをとりまとめていた4名の生徒さんにインタビューをしてまいりました。

海外大学の講義翻訳活動インタビュー

――本日はよろしくお願いいたします。
もう冬休みなのに朝からお集まりいただいてありがとうございました。


とんでもないです!
終業式はまだなので、お休みというより自宅学習日ですね。


――さて、今回は広尾学園高等学校 インターナショナルコースの「海外大学の講義を翻訳する活動」について聞かせていただきたいと思います。
初めに一つ伺っておきたいのですが、その活動は女性限定なのでしょうか?


そんなことないですよ!
たまたま各チームのまとめ役が女子ばかりだっただけで、参加者の半分くらいは男子でした。


高校1年生は参加人数30名のうち半分くらいが男子で……。


高校2年生はそもそもクラスに男子が少ないのですが、その全員が参加していました。


――なるほど。参加者は全部で52名だったと伺っていますが、高校1年生の方が多かったのですね。


はい。ただ高校2年生はそもそも学年の人数が少ないので、参加者の割合で言えば同じくらいだと思います。


――では、活動の詳しい内容を教えてください。


活動の内容としては、海外大学で行われた一時間程度の講義を文章に起こしたものをもらい、実際の講義の動画を見ながら日本語に訳していくというものになります。
今年は心理学に関する講座でした。


――全員で一つの講義を訳したのですか?


いえ、子供の成長過程など1つのテーマに関する一連の講義すべてだったので、講義自体は複数ありました。
高校1年生が5グループ、高校2年生が3グループに分かれていて、それぞれのグループで1つずつ講座を担当しています。


――複数ですか!
ますますハードルが高くなったように思えるのですが、この活動はどうして始まったのでしょう? 有志の参加ということですから、先生にやらされて嫌々……というわけではないと思いますが。


元は、何年か前に先輩たちの間で「海外大学の講座を日本でも受けられたらいいのに」という声が上がり、大学にお願いをして講座の動画を日本語に翻訳させていただいたのがきっかけでした。
それがとても面白く有意義な活動だということで代々受け継がれてきて、毎年恒例になりつつあります。
ですので、生徒主導といって良いのではないかと思います。
今では海外大学の動画をウェブ上で発信しているAsuka Academyさんから、この講座に挑戦してみませんかと依頼されるようにまでなってきたんですよ。今年の心理学の講座動画はAsuka Academyさんから提供していただいたものです。


――たしかに興味深い内容ですが、なかなか高校生でその意義に気付いて、しかもやってみようと決意できる人は少ないように思います。
皆さんすごいですね。


どうして翻訳活動に参加しようと思ったのか

――それぞれ、何故この活動に参加しようと考えたか、動機を教えていただいても良いですか?


私は帰国子女で英語が使えます。しかし多くの日本人は日本語だけしかしゃべれない、あるいは日本語以外には自信がないものですよね。
世の中にはたくさんの知識があって、しかもそれがインターネット上などで気軽に聞けるよう発信されているのに、ただ英語が使われているというだけでそれを遠ざけてしまうのはとてももったいないことだなと常々思っていました。
私が得意な英語を使ってより多くの人に素晴らしい講義を紹介できるせっかくのチャンスということで、ぜひ参加しようと決めたんです。


私も英語と日本語の両方をしゃべれます。ただ、どうしても日常的に使うのは日本語が多くなってしまって、せっかくしゃべれるものを片方しか使えないのではもったいないですから、学生の間から二か国語の橋渡しをして両言語への理解を深めたいと考えていました。
それで、高校1年生のときも参加して今年も2年目の参加を決めました。
昨年は英語力と日本語力のアップを目標に始めたのですが、やってみると講義の内容自体がそもそも興味深くて(心理学なんていつもの学校の授業ではここまで詳しく学べないので)、今年は新しい知識が増えるのが楽しくてどんな講義なんだろうとわくわくしていました。


私も帰国子女です。日本語と英語を両方使えるので、それを活かせる翻訳などの仕事には元々興味を持っていました。せっかく今のうちから興味のある仕事に触れられるということで、良い機会だと思い参加したのが動機になります。
あとは、これから進むであろう大学というところの講義がどのような感じか知りたかったのもありました。
海外大学の講義を聞きたくても聞けない人のために機会を広げることができたら、人助けになるのではないかと、自分でも少しは人の役に立てるかなと思います。


ここまで三人とも帰国子女なのですが、私は中学に上がってから学校の授業で英語を始めたタイプです。
アメリカの大学へ進学したいので、高校生になったときインターナショナルコースを選択しましたが、そういう私だからこそ、海外大学の講義を聞いてみたい、でも英語のみで行われる講義に壁を感じてしまう、という気持ちはとてもよくわかります。
昔の私のようにそう思っている人はきっとどこかにいて、もし私がその壁を取り去ってあげられるのならと思い参加しました。
この活動は単純に英語の文章を日本語に訳すというものではなく、動画に対して私たちが訳した日本語の文章が字幕として出てくるのがゴールです。
本を読むよりも臨場感があり、教授の表情や動きなども理解の材料にできるのでわかりやすいですから、きっと海外大学の講義を日本語字幕付きで見るということには需要があると思っていました。 帰国子女ほどの英語力はありませんが、勉強の意味も込めて参加して良かったです。周りより日本語が得意なので、二次翻訳の時に日本語として言い回しがおかしくないかなどチェックを担当できたのは嬉しくて自信に繋がりました。


あ、二次翻訳というのは、内容チェックの意味も込めて二度目の翻訳をしたときのことです。
まず初めに各グループで担当する講座を決めて一次翻訳をし、その時もグループ内で話し合いをしてチェックはしているのですが、間違いがあったり分かりづらい表現になっていたりしてはいけないのでグループで担当する講座を入れ替えて二次翻訳を行いました。
1つの講義につき少なくとも2つのグループで翻訳を行い、それを突き合わせて最終的な訳を作成しています。


――皆さんなかなか熱い動機があったのですね。
ところでK.H.さんに伺いたいのですが、帰国子女でないのに何故アメリカの大学を目指そうと思ったのでしょう?


小学校6年生のときの先生が、海外大学の出身でした。
とても素敵な先生で、あんな風になりたいと憧れて……。それで私も海外の大学へ行こうと思ったんです。


――憧れの人が出た大学を目指したいという気持ちはよくわかります。ぜひ志望大学へいかれるようがんばってください!
他の皆さんも海外大学を志望していらっしゃるのでしょうか?


そうですね。


私はまだはっきりと決めてはいませんが、日本の大学と海外の大学を併願しようかなとなんとなく。


高校2年生の冬になってしまったのでそろそろ進路を決めなくてはと思っていますが、今のところ私も国内と海外の大学を併願するつもりです。


――進学をしたい、どこの大学を目指そうかな、と思ったときに日本国内だけでなく世界中の大学を選択肢にできることは、とても幸福なことですね。
そういう教育を受けていらっしゃる皆さんがうらやましいです。


実際に参加してみて

――さて、特技を活かして知識を広めたい、興味のある仕事の一端に触れてみたい、とだいぶはっきりした目的意識があって参加された皆さんですが、翻訳活動を実際にやってみて思っていたのと違った部分などありましたか?


実を言うと、私は元々テーマの心理学に興味がありませんでした。建築学か心理学のどちらかということで参加者が投票を行い、心理学に決まったのですが私は建築学が良かったんです。
でもこうして聞かざるを得ない状況で講義を聞いてみたら心理学も意外と面白いものだと思い始めて、難しいから、興味がないからといって関わる前に諦めるのはもったいないな、と感じました。
語学力を高めるだけでなく、興味を広げられたことは大きな収穫です。


私も講義の内容自体をとても面白く感じました。
また、学校の授業で読んだことのある本に少しですが関連のあることが出てきて、日々の授業を土台に新しい知識を身につけられた経験は貴重でした。
訳していく中で、ある程度英語力には自信がありましたが日本語で表現することの方がむしろ難しいのではと思ったのも良い経験です。英語として見たとき、言われていることの意味はわかるけれどそれを日本語にうまく訳すのがとても難しかったです。元の文章の形をどこまで変えて良いのか、という形式的なこともありますし、文章だけを見てこういう意味だろうと理解した気になっていたのに、教授が話している様子を実際に見ると表情やイントネーションなど文字列以外の情報から、むしろこういう表現にしないと本当に言いたいことが伝わらないのではないかと訳を変えることになったり、そういう細かな部分がとても難しくて、だからこそ面白かったです。


私はY.R.さんと逆で以前から心理学や哲学に興味があったので、楽しみにしていました。
しかし実際取り組んでみると、とにかく量が多いのです。人が1時間に話す量は文章にするとこんなにあるのか、と驚きました。グループの5人で訳す箇所を等分にしましたが、それでもすごい量でした。その上、心理学の専門的な言葉がごろごろ出てきます。
ただ、なんとか訳し終えてから達成感があったのも事実でした。
ちなみにやってみて、情報量が多いし単語は難しいしということで嫌になったわけではありません。むしろ大学の講義はこんな感じなんだと実感することができ、より勉強してみたくなりました。
高校生でも食らい付いていけばこうして理解して、人に伝えるということまでできるのですから、進学まで勉強を続けていけばきっと大学生になるころにはなんとかなると思えます。


私は始める前、本当に不安でした。先ほども言ったように周りに帰国子女が多い中で自分みたいなずっと日本にいる人間がきちんとできるだろうかと思っていましたし、翻訳を始めてからもK.U.さんが言っていた通り単語は難しくてわからないし私には表現もわからなくて……。
表現がわからないというのは、講義は教授がしゃべっているものなので話し言葉なんです。それがいわゆる順序立てて文法に則った書かれ方をしている文章とはまったく違っていて、私には難しいものでした。
ただ、日本語力を活かして最終チェックなどに役立てられたなど私だからできることもあって、自分に劣っている部分があってもそれをメリットに変えることができるという自信に繋がりました。


海外大学の講義翻訳活動インタビュー

苦労したところ

――それぞれに翻訳活動を通じて貴重な気付きを得られたのですね。
次は少し意地悪な質問になってしまいますが、ここが辛かったあるいは難しかったという部分はありましたか? もう二度とやりたくない!と思ったりなど。


全体的に難しいのは否定しません。英語にも日本語にも自信があったのですが、辞書が全然手放せなくてだいぶ高いハードルに挑んでしまったなと思いました。
それと、英語の授業で問題として接する日本語訳と、きちんとした翻訳はまったくの別物で、正直に言って舐めてかかっていたなと反省しました。
でもそんな、もう二度とやりたくないとは思いませんでしたよ。


私はとにかく量が辛かったです。
教授が1時間ずっとしゃべり倒している、その会話量とそこに乗せられた情報量が半端ではありません。
しかも心理学の知識をそもそも持ち合わせていない状態で挑んだので日本語でも知らない内容を初めから英語で理解しようというのが大変でした。
ですからプロの心理学者からすると「常識のない」翻訳になってしまっているかもしれませんが、むしろ心理学を学んだことがない人にとってはわかりやすく取っ付きやすい内容になったのではないかと思います。


私も量が辛かったですが、全体の量というよりそもそもの1文が長いのが訳しにくかったです。
エクセルに講義の起こしが書いてあったのですが、基本的に1セルに1文のはずが長すぎて何行にもわたっているところも多くて、どこで意味が切れているんだろう?と整理するのにだいぶ混乱しました。


それはありましたね。一つ前の答えともかぶるんですが、全体的にしゃべり言葉が使われている上に教授の思いつきで突然の話題転換がありますし、聴講生の様子を見ていきなり具体例を入れてきたりもしますし、会話なら当たり前なのかもしれませんが、それを人に伝わるように日本語にしようとすると……、「もー!」と何度思ったことか……。


――たしかにそれは難しいですしもどかしいですね。
その大変な作業に、どのくらいの期間取り組んでいたのですか?


たまたま夏休みを挟んでいたので長めでしたが、全体で2ヶ月くらいでしたね?


そうですね。ただ一次翻訳と二次翻訳をしているので、……1つの講義につき1ヶ月弱くらいで訳したと思います。
Asuka Academyさんから期限の指定は特になかったのですが、高校3年生の先輩方も参加していたのであまり長くなると受験に差し障りますし、だらだらやっても仕方ないということで、1ヶ月で訳そうと決めました。


――スケジュールも自分たちで組んだんですか!
すごいですね!


まず全体のお尻を決めてそこから各作業の締め切りを逆算していこうという先輩方の考え方はとても参考になりました。


一次翻訳と二次翻訳の二度やろうと決めたのも私たち生徒なんですよ。良い選択だったと思っています。


翻訳活動を終えて

――スケジュールを管理する能力はとても大切ですから、いつまでも役立つ考え方が身に付いたのは素晴らしいですね。
そのように、何か翻訳活動に参加してみる前と後ではご自分の中で変わった考え方やものの見方などありましたか?


知識の食わず嫌いをやめようと思いました!
もともと心理学に興味がなかったので前向きではなかったのですが、やってみたら考えていたよりずっと面白くて、よく知りもしないことを触れてみる前から勝手に不得意だと思い込んでそのまま遠ざけてしまうのはいけないなと実感したんです。
それはもしかしたら、不得意なのではなく本当の面白さを知らないだけかもしれない。
ですから、参加する前は自分を文系だと思っていて大学も文系学部へ進もうかと考えていましたが、理系の分野にも目を向けるようになりました。


私は言語を問わず、伝える力というのはとても重要だなと思うようになりました。
単なる言語力――たくさんの単語を知っているとか、文法を正しく使えるとかではなく、人に自分の考えを正しく伝えられる力です。
日常会話でも言葉だけではないニュアンス、表情などで伝えることは多いですよね。文で読んだだけだとわからなかった気持ちも顔を見て話すとわかったりします。
その場にいて会話をしていた人なら理解できた、言葉の意味の裏側にある気持ちを、会話に参加していなかった第三者に伝えることの難しさを知り、日ごろからどういう言葉を使ったら相手に最も意図が伝わるのかを考えるようになりました。


言葉は毎日使わないと本当に身についていることにはならないなと思いました。
英語には自信がありましたが、翻訳を通じてまだまだだなぁと思う部分も実感できて、わかっているからもういいと終わりにしないで毎日勉強し続けなくてはとやる気になりました。
翻訳の仕事についてはとても楽しかったのでぜひ就いてみたいと思っています。
国によって言語はまったく違っていて、それらを繋げるためには翻訳という行為が必須です。アメリカの大学に行きたいと思って、実際に行かれる人は良いですが、どうしても行かれない、思うように英語を勉強できない人もいます。翻訳さえあればそういう人にも海外から発信された知識を届けられる、そのことで伝わる情報の量を思えば、翻訳の苦労も報われるように思いました。


私は英語の楽しみ方が変わりました。
海外の映画やドラマに日本語の字幕がついているときには、この英語の会話はこういう訳し方をするんだ、自分が訳すとしたらこうする、とこれまで気にしなかったことを気にするようになりました。
また、人に伝えるということを意識して翻訳したおかげで、思うところを正確に伝えることの難しさ、大切さがわかりました。
特定の相手と会話をする、文章として書く、大勢の前でスピーチする、といったように、人に何かを伝える場面はたくさんあります。そしてそれぞれの場面によって最も上手く自分の言いたいことを伝えられる言葉の選び方、表現の仕方は違います。そのことを意識するようになりました。


――ありがとうございます。
それでは最後に、皆さんからこちらの記事を読んでいる方に一言お願いします。


大学の講義、しかも心理学と聞くととても難しくて歯が立たないのではと思われるかもしれません。
でも、教授の話し方もカジュアルで内容自体も純粋に面白いものです。
少しでも興味がありましたら、固定観念を捨ててぜひ動画を見てください。高校生レベルの語学力で翻訳しているので、心理学を知らない方にこそ私たちの成果を感じていただきたいと思います。
心理学がどうしても好きになれない方は、私たちが翻訳に取り組んだ講義以外の動画も楽しいものばかりなので、気になるものから試してみてくださいね!


広尾学園高等学校 インターナショナルコースの皆さんが翻訳した講義の動画はAsuka Academyウェブサイトにてご覧いただけます。

下記より該当講義動画の視聴ページへリンクしておりますので、ぜひご覧ください。
Asuka Academy [Yale] 心理学入門 Part 1


授業のない、本来ならば登校しなくて良い日だったにも関わらず朝からの取材に快くお付き合いいただきました。
始終笑顔で、目をきらきらさせて話してくださり、難しい試みに挑んで結果を出せたことが本当に楽しかったのだなとひしひし伝わってくるインタビューでした。
皆さん、本当にありがとうございました!


海外大学の講義翻訳活動インタビュー



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