2015-04-17

【連載】編集部注目の学校 徹底レポート
芝中学校・高等学校 ベトナム研修報告会

上下水道・ガスなどインフラが未整備で、英語が通じないベトナムの農村に男子高校生がホームスティを体験―。港区にある私立男子校の芝中学校・高等学校では、従来の英語圏であるニュージーランド研修とカナダ研修に、2013年度からベトナム研修が加わりました。

2015年1月17日に、第2回目の研修から帰国したばかりの生徒たちによる報告会が、保護者・在校生を対象に開催されました。過酷な体験談を想像していましたが、生徒たちは笑顔と自信に満ち溢れて発表していました。8日間の研修で、彼らにどのような変化が起きたのでしょうか―。

今日は、芝のユニークなベトナム研修の内容紹介と、参加者が感じた生の声をお届けします。



活動報告 ベトナムの5日間

最初に、研修に引率した蛯谷千晴先生から、研修内容の報告がありました。


■12/24― ホームスティ先のカイベー村はベトナム戦争で戦地となった場所です。まず戦争の歴史を学ぶ目的で戦争証跡博物館に見学しました。その後、バスと水上ボートを乗り継いでカイベー村に到着しました。

ベトナム研修は「学校交流」と「生活体験」の2本の柱があります。基本的なスケジュールは、午前中に学校訪問、午後に生活体験をしました。学校交流では、カイベー村にあるミーホイ中学校に3日間、市内に近いカイベー高校に半日間訪問しました。

■12/25─ 言語はお互い通じないため、バトミントンとバレーボールをして交流を少しずつ深めました。ベトナムではバトミントンが大変人気ですので、昨年に続いて芝からミーホイ中学校にラケットを贈呈しました。ミーホイ中学校の生徒に、伝統的な踊りや歌を披露していただき、お返しに芝の生徒は日本のポップスと英語の人気曲を熱唱しました。

■12/26― 昨日に続き身体を動かして交流しました。ミーホイ中学校には風船を割る競技やスイカ割りのような競技など4種目を、日本からはビーチフラッグや手つなぎ鬼、大縄とび対決などの種目を用意しました。

■12/27― 生徒の代表が食文化や日常生活など日本の文化について紹介しました。食文化の紹介では、お汁粉とお吸い物のレトルト食品を日本から持参して実際に飲んでもらいました。そのほか、満員電車や朝ご飯、お弁当の話、日本の武道について少林寺拳法の実演もしながら話しました。

ところで、カイベー村では、ごみの概念が根付いていません。食べ終わったものや使い終わったものはその場で放り投げるため、道にはごみが散乱しています。そこでベトナムの生徒と一緒にごみ拾いをしました。最後に、今後の交流を願って記念植樹をしました。 午後はカイベー市内の高校に訪問しました。ここでは英語での交流が可能なため、すぐに打ち解けることができました。

生活体験では、主に農作業と魚つかみを経験しました。芝の生徒は現地の人と同じ行動を、つまり自分たちで取ってきたものを食べる経験をしました。自ら木を登りヤシの実を取って飲んだり、池に入って泥だらけになりながら手探りで魚を取ったり、自分たちで掘った芋を洗って各家庭に持ち帰り夕飯の料理に出していただきました。

■12/28― 自由行動日です。物資を運ぶのに小舟を使って水上を渡りますが、舟をうまく漕げないため、ライフジャケットを着ながら小舟に乗りました。案の定上手に漕げず水に落ちましたが、みんな平気で泳いで行動していました。ほかに、池の魚釣りやライスペーパーづくりを体験した生徒もいました。 最終日はお別れパーティで、どの家庭もホストファミリーが号泣されていました。




いよいよ、研修参加者14名のプレゼンです。プレゼンの目的は、帰国後にベトナム研修の経験を振り返り、人に伝えることで本当の意味でベトナム研修を理解して自分の中に消化していけるのではないか、という意図で開催されました。


言葉が通じない国でのコミュニケーションの難しさ

■ 初めは沈黙が続いて辛かったです。自分から積極的に話しかけ、ジェスチャーを交えて、本気で伝えたいという気持ちをあらわにして打ち解けていきました。最終日には、ホームスティ先の子に「寂しい」と言ってもらえるまで親しくなれました。(Iさん・高1)

■ ベトナム語は発音が難しく、会話がほとんど通じないため、「言葉の壁」を感じました。ただ、私たちが理解したいという姿勢とリスペクトの気持ちをもって臨んだら、何となくニュアンスだけは伝わりました。コミュニケーションをしたければ笑顔で積極的に話しかけることも大事だと思いました。(Mさん・高2)

■ 言葉が通じない中でのコミュニケーションの難しさを痛感しました。ボディランゲージすら通じません。カイベー高校は、芝の生徒は相当英語ができると思っていたそうで、英語ができる選抜メンバーが研修に参加していました。英語で何を言っているのか半分も理解できませんでしたが、自分も英語の勉強をもっとがんばろう!という刺激を受けました。

■ ミーホイ中学校でしたバトミントンは、スポーツを通して全員で感情を共有し仲が深まったため、スポーツの素晴らしさを感じました。スポーツの醍醐味は「皆で力を合わせて勝つ」という部分がありますが、「コミュニケーションにおける最大の武器」でもあると感じました。(Mさん・高1)

■ 私は以前に芝のニュージーランド研修にも行かせてもらいました。そこでは英語が通じるため意思疎通ができましたが、ベトナムでは根本的に言葉が分かりません。相手のジェスチャーや雰囲気、相手の目を見ていないと相手の話を理解できないので、「人の目を見て話す」という基本的なことが大切だと分かりました。(Iさん・高1)

■ コミュニケーションをとるためには、理解と敬意の両方が大事であることを学びました。家では、ベトナム語の指さし会話帳をホストファザーが読み込んでいました。私たちのことを理解しようと考えていてくれたのでしょう。研修も終盤のとき、ホストマザーが私の名前を呼んでくれました。初日の自己紹介で数回名乗っただけでしたので、覚えてくれているとは思いませんでした。

私を、団体旅行客の一人ではなく、一人の人間として思っていてくれている姿勢を見て、この人たちに忘れられたくない、つながっていたいという想いが湧き上がりました。(Iさん・高2)

■ 事前にベトナム語をほとんど勉強せずに研修に行きましたが、大人とはボディランゲージで、子供達とは遊びやスポーツを通して、心で通じることができました。 私は身体が大きいほうなので、最初は現地の中学生に少し怖がられてしまったが、いろいろな行事を通じて仲良くなりました。(Sさん・高2)



英語は世界共通語

■ この研修で、「言葉」に対する意識の変化がありました。「こんにちは」「おいしい」「お腹いっぱい」しかベトナム語を話せなかったのですが、仲良くなれました。

では、「人との関わり合いに言葉はいらない」「伝えたい思いがあれば大丈夫」なのかというと、それは違います。仲良くなると困ることが増えるのです。自分から話したくなっても、ホストファミリーと目が合っても、何も言えません。親しくなるためには、言葉はあいさつくらい覚えておけば大丈夫ですが、自分が伝えたいことは伝わりません。

より意思を伝えるには共通の言葉が不可欠です。一方、カイベー高校では英語が通じて安心しました。英語は様々な場所で使えてとても便利で、極めるに越したことはないと実感しました。(Iさん・高2)

■ 中学校では、基本的に英語が通じないためスポーツや踊り、歌をメインとした交流をしていました。身体を動かして楽しむスポーツや視覚聴覚で楽しむ踊りと歌は楽しみを共有しやすかったです。母国語が違う人でも、英語さえあればある程度のコミュニケーションが図れるものだと感じました。(Sさん・高1)

■ ベトナムの方とは言葉が通じませんでしたが、笑顔でいてくれたので仲良くなりました。笑顔で接することは大事だと思いました。(Sさん・高2)

■ 常に笑顔でいることや、相手の立場に立って相手が何を伝えたいのかを想像して接することが大事だと感じました。笑顔でいるといつも楽しい雰囲気になり、人が集まってくるため、言葉が通じない上では大事な要素になりました。(Mさん・高1)

生活習慣の違い

■ さまざまな経験から、日本とベトナムで文化の違いを感じ、私たちが当たり前だと思っていたことが実は有り難いことであることに気づきました。 ベトナムのトイレは水洗ではなく汲み取り式のため、桶から水を汲んで勢いで流します。紙を詰まらせてはいけないため、拭いた紙は全てごみ箱に捨てます。シャワーはありません。水道水は飲むとお腹を壊すため、ミネラルウォーターを飲んでいました。また、現地の子は裸足で生活していたので、私も途中から裸足で過ごしていました。サッカーボールを蹴る時も裸足でした。(Iさん・高1)

■ ベトナムでは、「生活の制約が少ない」と感じました。例えば、家の扉がずっと開けっ放しなので大丈夫なのか聞くと、知り合い同士だから問題ない、とのことでした。また、木の実などを食べた後に、どこに捨てれば良いのかを聞くと、「そこらへんに投げて」と言われました。(Mさん・高1)

■ ベトナムは、“暑い・発展途上国・ベトナム戦争の歴史・治安が悪い”というマイナスのイメージばかりでしたので、この研修は“辛い・きつい・苦しい”と思っていました。実際は、暑いし蚊が多く、停電があります。生活のリズムや文化の違い、言語が通じないなど大変なことがたくさんありました。しかし自然に囲まれて食事がおいしく物価が安い。そして何よりも人々の優しさに心を打たれました。

ホストファミリーだけでなく、別の家族が釣りに誘ってくれるなど、どこでも私たちを歓迎してくれました。知らない子が助けてくれることもありました。どこに行っても優しくしてくれることは、決して簡単なことではありません。それをしてくれたファミリー、村の人たちに大変感謝しています。(Mさん・高1)

Mさん(高1)のプレゼン用スライドより



食べものの大切さ

■ 日本のスーパーで肉や魚は加工されて切り身になっているものが多く、生きていたと感じられるものが残っていません。ベトナムは料理にニワトリの足が入っているといった生々しさが残っています。生きたまま売っているカエル、育てて食べるためのヒヨコなど、食べ物の生きている姿を見られたことは貴重な体験でした。 人間は動植物の命をいただいて生きているにも関わらず、日本が出す残飯の量が異常だと考えさせられました。この研修を通じて、生きていく上で大切なことを学ばせていただきました。 (Iさん・高1)

■ ベトナム研修で一番学んだことは、食事の大切さです。食事は腹を満たすだけでなく、家族との団らんの場として成り立ちました。また歓迎の印となりました。 まだ打ち解けられていなかった頃、会話が出来ずに焦っていました。ある日、見たことが無い料理がでてきたとき、ホストファミリーが一つずつ食べ方を教えてくれました。

ベトナムの料理が出ている辞書を見ているとき、ホストファミリーから何が好きなのかと聞かれて「全部好きです」と答えました。すると翌日の食卓に全部出てきました。歓迎されている気持ちが伝わってきて嬉しかったです。言葉が通じなくても同じ人間です。一緒に食事をすれば仲良くなれることを学びました。 (Wさん・高1)

Iさん(高1)のプレゼン用スライドより


「豊かさ」とは何かを考える

■ ベトナムの生活は不便なことが多かったのに、日本には無い豊かさや活気が感じられました。日本では、「ものに恵まれ、不自由なく生活すること」が自分にとって唯一の幸せだと思っていましたが、ベトナムで豊かな自然に囲まれて生き生きと生活することも、別の幸福であると深く感じました。と同時に、自分の幸せの価値観を人に押し付けてはならないと思いました。(Mさん・高1)

■ 一緒にいるだけで楽しくなるような人たちが多く、日本とは違う「豊かさ」を感じました。日が沈んだら寝るような、自然と一体化した生活は日本では感じられない豊かさでした。 今回の研修では、現地の人の温かさに触れられる、かけがえのない経験ができました。(Mさん・高2)

■ 最初のベトナムのイメージは、“ベトナム戦争、社会主義国、開発途上国だから、貧困で苦労をしている中で皆強く生きている”と思っていました。これが大きな間違いで、ベトナムでは貧しさは感じられず、素晴らしい笑顔で迎えてくれました。

「豊かさ」は、今まではGDPという「ものさし」で測れると考えていました。ベトナムはものさしが違うだけで、実際は豊かな国だという印象をもちました。 他の価値観、自分と違う「ものさし」を知らないと、自分の価値観を他人に押し付けてしまいます。ベトナム研修で自分とは違う価値観を学べることは良い経験になると思います。(Tさん・高2)



グローバルな視点を身につける

■ 今回の研修で僕が得たものは、「日本や欧米とは異なる価値観を持った人たちと分かり合うための行動力」と「世界中の人と関わって行くためのグローバルな視点と考え方」でした。 例えば、ごみの問題です。私たちがごみの分別について、現地の方に、「その辺に捨てるのは汚いからやめたほうが良い」と一方的に言うのではなく、ベトナムの人たちの文化や慣習をきちんと理解した上で最良の方法を一緒に見つけていくことが良いと思います。(高1・Yさん)

■ 通訳をしてくれた方が、 「通訳は恵まれていない仕事だけど、人が喜んでくれるとやりがいを感じるから続けられる」と話してくれました。ベトナム研修に行くまでは、自分の将来について全く考えたことはなく夢もありませんでしたが、通訳に限らずグローバルな社会の中で自分に合う仕事が見つけられたらいいなと感じるようになりました。これから部活も勉強もがんばります。(Mさん・高1)

■ 現地の子供たちや中学校・高校の生徒と交流できたことは、普通の旅行では得られない素晴らしい経験になりました。芝の研修参加者と仲良くなれたこと、ベトナムで仲良くなった人とはSNSでつながることができました。(Yさん・高1)  



「参加を許してくれた保護者に感謝の言葉を伝えてください。親としてこの研修に行かせるのは怖かったはずです。許してくれた親に御礼を言いましょう」― 報告会の最後に、研修に引率した宮澤先生が生徒に対してこう言いました。

生徒たちは「ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝え、ていねいに会釈をして、報告会が終了しました。


■ 取材を終えて(編集部より)

報告会で述べられた、ベトナム研修を通して感じた生徒たちの発見-「笑顔の大事さ」「食べものの大切さ」「豊かさ、優しさとは何か」などは、これから生きていく上で欠かせないテーマだと思います。

参加された生徒は皆、異国の地での言語や生活習慣の違いに悩み、自分で解決策を見出して乗り越えてきました。8日間の研修日程のうち、参加者が現地でホームスティをしたのは5日間です。そのわずかな期間に、多くの発見をして視野が広がり、変化をもたらし、自信につながったのではないでしょうか。

こんなベトナム研修という素晴らしい機会を、芝中学校・高等学校は生徒たちに提供されています。今後も多くの生徒に体験してほしいと願います。




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