毎年大人気の芝学園祭。
学校ではこの夏休みに、お客様を迎える準備が着々と進んでいます。
今回は生徒会顧問の小室先生に、準備期間の様子について伺いました。
――本日はお暑いところインタビューにお答えいただきありがとうございます。
とんでもないです。どうぞよろしくお願いします。
――先ほどたくさんの生徒さんたちとすれ違いましたが、まだ授業は行われているのでしょうか?
いえ、先週から夏休みに入りました。ただ、本校は夏休みに入った後一週間程度、希望者に対して夏期講習を行うので、それに参加する生徒たちがたくさんいます。強制ではないのですが、かなり多くの生徒が参加していますね。講習の後に部活動がある生徒もいます。
――勉強に部活に、パワフルに活動されているのですね。お友達同士で楽しそうにされていたので、夏期講習とは意外でした。
本校の生徒は何にでも自主的に取り組む子が多いです。学校の雰囲気が活発で前向きなので、六年間過ごすうちに段々と積極性を身につけられるのだと思います。
――何でも自分から参加してみて、しかもそれを楽しもうという気概が持てるのは大変良いことですね。
部活動があるとのことでしたが、学園祭の準備もその時間でクラスごとに集まったりして進めていくのですか?
そういう部もあります。
実は、準備についてはすべて生徒に一任しており、教員は求められた時のサポートに留まります。学園祭に参加する団体ごとに書類を提出してもらうだけで、具体的に何を行うか、必要な物のピックアップといつまでにどうやってそれらを調達するかなどのスケジューリングは全部生徒たちが自分で行っています。
また、本校の学園祭はクラスごとの出し物はありません。部活動で催しを計画するのが基本で、後はクラブに所属していない生徒もいるので有志団体がいくつかあります。
――部活動ごとが基本というのは面白そうですね。学年を超えた繋がりが見られそうです。
所属している部活動を基盤にして学園祭を行うというのは、意外に利点があります。
まず、好きなことを同じくしているメンバーが集まっているので、結束が固いということが挙げられます。一つの目標へ向かって進んでゆくペースがかなり速いんですね。普段やはり試合に勝とうとか、興味のあることについて研究を深めようとか、そういった共通のゴールをみんなで目指すという協力体制ががっちり固まっていますから、到達点が学園祭になったというだけでいつもの部活動の活気がそのまま生きてきます。
次に、これは正に複数学年にまたがっている部活動だからこそなのですが、昨年までの失敗を反省しつつ新しいことにチャレンジしていくことができます。もしクラスや学年ごとに何かをやるとなると、毎年生徒の年次は上がっていきますしクラス替えなどもありますから、「昨年の経験者」が非常に少なくなってしまうでしょう。しかし部活動であればほとんどの生徒がずっと同じクラブに所属し続けるので、昨年高校1年生で先輩の補佐をしていた生徒がその時の反省を生かして今年は高校2年生の取りまとめ役になる、ということが可能です。先輩からの申し送りを学び、自分の経験を後輩に伝えてゆくという縦の繋がりができているので、毎年部活動ごとの催しがどんどんレベルアップしていく様子が大変面白いですよ。できれば何年か続けてご覧いただきたいくらいです。
――年に一度の学園祭ではありますが、何年分もの努力や反省が積み重なって出来上がったものなのですね。
先ほど、取りまとめ役は高校2年生とのことでしたが、部活動ですと高校3年生は引退ですか?
はい。高校3年生は夏までにほとんど引退します。9月の学園祭は、高校2年生が部活動の最高学年となって下級生たちを引っ張っていきます。
昨年度の学園祭のために提出された書類。企画書や計画表、組織図など多岐にわたり、まさに圧巻の量でした。ファイルが500mlペットボトルの底面直径とほぼ同じ分厚さになっています。
中身は学外秘ということでお見せできませんが、準備日から当日までのスケジュールとそれに合わせた動線など、イベント会社で使われている書類ですと言われても納得できそうなほどしっかりしたものでした。
――さて、毎年学園祭にはテーマがあるということですが、今年のテーマをお聞かせいただけますか?
今年のテーマは「Spark!!」に決まりました。英単語の意味そのままで、「閃光」「輝き」「ひらめき」「活気」を四本の柱とするそうです。
このテーマについても生徒たちから候補を募って、幹部会が決定します。
実は最初、学校中の鬼才をお客様に見ていただく場ということで「仙祭鬼祭」に決まりかけていたらしいのですが、漢文の先生にチェックをお願いしたところ、悪い字ではないけれど幽霊のお祭りみたいだねとおっしゃったということでこちらに変えたそうです。
自分たちで漢文の先生に語句のイメージを尋ねにいくなど、テーマ決め一つにせよどんな方がお客様になっても大丈夫なように気を配って動いている生徒たちは本当に成長したなと思います。
――テーマに則って、芝学園の生徒さんたちが部活動ごとに火花を散らし、競って輝きを見せてくださるわけですね。
本校の学園祭は生徒たちの文化的な発表の場というわけではなく、まさに「お祭り」です。ですから文化祭ではなく学園祭と呼んでいます。いかにお客様を楽しませるか、ということを全員が念頭に置いて準備を進めていきます。
学問を本分とする学校という場において行う以上、文化の発信地であれという考え方もあることでしょうし、それを否定するわけではありませんが、本校としてはお客様を楽しませ、良い気分で帰っていただく、そのことを生徒たち自身も心の底から楽しむというのを目指しているのです。
真面目にかしこまっていないと何も学べない、というのはおかしいですね。楽しさの中にもたくさんの学びがありますし、むしろ学ぶというのはとても楽しいことです。
どのくらいの世代には何が面白いと感じられるのか、とっつきにくいものをどのように工夫して表現すれば相手に楽しいと感じてもらえるのか、自分たちは世間からどう見られていてどうやったら受け入れられるのか、発する自分も、受け取る相手も面白いと感じられるものをどのようにしたら実現できるのか、社会的ルールと時間制限を守りながらその範囲内でいかに面白くすることができるか、授業だけでは実感できない他者と自分との関わりについてのそういったたくさんのことを、生徒たちは学園祭の準備と本番を通じて、楽しみながら学んでいきます。
先ほどのテーマ決めにしてもそうです。生徒たちは最近英語のテーマが続きがちだからとお客様や自分たちが飽きないよう、漢字でのテーマを初め模索しました。しかし漢字とは日本で使われている意味だけではありません。もし漢字を日常的に使用する他の国から見た時、相手を不快にさせてしまうような語になっていたらいけないからと漢文の視点でもチェックを行い、やはりやめよう、という決断をしました。彼らはきちんと、世界的なレベルで誰もが心から楽しめるように気を配ることを覚えています。
ですから、お客様にはぜひ、ご自身の立場で思い切り学園祭を楽しんでいただきたいと思います。
――お話だけでも大変わくわくします!
――具体的な催しのことに移りますが、受験生向けのプログラムなどはあるのでしょうか?
本校の受験を控えて、ということですと小学生のお子さんですね。
毎年小学生くらいの子供たちに人気が高いのは、まず技術工作部の鉄道模型です。5インチゲージのものですがかなり本格的で馬力もあり、屋根の上にまたがって走らせることができます。校庭にレールを設置して一周するのですが、これが非常に楽しいようですね。大人の方も10人まで乗ることができますので、小さなお子さんも一緒に楽しめますよ。
技術工作部の準備風景。なんと奥には3Dプリンタまで完備されていました。
吹き抜けになっており広いので、学園祭当日にはここを片付けて音楽系の部活動がライブなどに使用するそうです。
あとはお化け屋敷も例年子供たちで順番待ちの列ができるほど人気です。単純に教室内に仕掛けを作るだけではなく、入場前に映像を見せるところが肝ですね。これが大人でもなかなか怖くなる出来で……。生徒たちが撮影、編集した動画なのですが、そのお化け屋敷はどういう設定なのか、何故そこへ入ることになったのかという前提の部分を作り込んでいるため怖さに説得力があります。
遊園地のお化け屋敷などでは身長や年齢に制限があって小さいお子さんは入れない場合もあるようですが、本校のお化け屋敷に制限はありません。どなたでもぜひ怖さを楽しんでいってください。
――本当にお客様を楽しませるということが第一目標なのですね。私はこの寄席が気になりますが……。
昨年度パンフレットの一部。気になるプログラムがたくさん並んでいます。
参加者は例年14,800名ほどということで大盛況ですので、参加したい催しは早めに会場を目指しましょう!
まだ今年のパンフレットは鋭意製作中ですので、こちらは昨年の予定表ですが、おそらくほぼ同じ構成になると思われます。落語研究部の寄席も、幅広い年齢層の方にご覧いただいています。
柔道場では少林寺拳法部の演武を、体育館ではバスケットボールの試合を一日目に行います。
――バスケットボールの試合には、「中三VS教員」と書いてありますが!?
そのままですね! 中学3年生のバスケ部選手と教員の選抜メンバーが試合をします。
ここ数年は教員メンバーの平均年齢が上がってきまして、負け越しですよ……。悔しいです。
――盛り上がっていますね!
観客の応援も白熱しますので、ぜひご参加いただきたいと思います。こういった試合やステージは途中でも入退場自由ですので、お気軽にどうぞ。
――整理券が必要なプログラムなどありますでしょうか。
小学生向け体験授業のみ、整理券を配布しています。
特に午前中の授業は毎年人気ですので、もし受けてみたいという方がいらしたら朝一番でお早めに整理券を確保してください。
整理券がないと参加できません。
整理券は講堂横のテントにて、朝から配布しています。
時間 | 教科 | 担当教員 |
---|---|---|
11:00~11:30 | 数学 | 岡田先生 |
12:00~12:30 | 社会 | 梅宮先生 |
13:00~13:30 | 英語 | 田口先生 |
14:00~14:30 | 理科 | 久保田先生 |
時間 | 教科 | 担当教員 |
---|---|---|
11:00~11:30 | 理科 | 三枝先生 |
12:00~12:30 | 英語 | 松坂先生 |
13:00~13:30 | 数学 | 坂詰先生 |
14:00~14:30 | 国語 | 西尾先生 |
他にミニ説明会と「芝中ツアー」も芝学園を受験したい人のための催しです。
中学1年生の有志が小学生の質問に答え、校内をご案内する企画で、中学生なりたてほやほやの生徒が担当していますからまだ小学生の気持ちもわかるでしょうし、何よりすべての返答が正直です。どこまで正直にぶちまけてしまうのか、少し心配なところもありますが……、嘘偽りのない生徒の本音が聞けますので、ぜひいらしてください。
――前年を踏襲するのが基本ということでしたが、何か今年度での変更点はありますか?
これまで、食品団体が6~7階に集中していたのをばらけさせることになりました。
該当のフロアがお昼時にひどく混み合い、それ以外の時間帯には閑散としてしまっていたため、各階にものを食べられるスペースを確保すればお客様の流れも良くなり、同じフロアにある展示などの人入りも増えるのではないか、という生徒たちからの発案で変更が決定しています。
飲食スペースは限ってしまった方が、提供する側としては楽です。その場所だけ管理すればいいですからね。配置を変更するだけでなく、ゴミ箱の置き方や調理した物をどのルートでどの時間に持っていくのかなど、細かい変更点がいくつも出てきますが、生徒たちがお客様のためを思い、がんばって調整しています。上手くいってくれればいいと思っています。
――最後に、参加を検討されている方へメッセージがございましたらお願いします。
そうですね、全部面白いと自信を持ってお薦めできますし、生徒たちも皆がんばっているのでじっくり楽しんでいただきたいですが、中でも特に挙げるとすれば実行委員の生徒の対応力です。
どこでいつ何が行われているか、スケジュールや配置図を頭に叩き込み、どのようなご質問、ご要望があっても応えられるよう準備をしています。
実行委員の生徒たちはカラーTシャツを着ているので、お困りのことがあってもなくても、お気軽にお声かけください!
小室先生、ありがとうございました。
お客様にも、生徒の皆さんにも、全力で楽しんでいただきたいという熱い想いがひしひし感じられるインタビューでした。
芝学園の弾けるような輝きを感じられる第71回学園祭に、ぜひ皆様ご参加ください。
今年のパンフレットも実行委員によって着々と作られていきます。