2009-12-29

(A)「遅かったじゃない!塾じゃない日に、なんでこんなに遅くなるの?友達と勉強して、はかどるの?だれが来ていたの?男子もいたの?」

(B)「帰宅時間がこんなに遅いと、事件や事故に巻き込まれるのではないかと心配したわ。」

(C)「お帰り。帰宅時間が遅くなりすぎたと思っているのね。」

 

では、解説を読んでいきましょう。

 

(A) は、親の気になっていることを聞き出そうと尋問をしています。


(B) は、帰宅時間が遅いことについて、親の心配を素直に伝えています。


(C) は、子どもが「遅くなって悪かった」と感じている気持ちを受け止めています。


それでは、(B)のパターンによる、その後の会話を見てみましょう。


Y子:「ただいまー…。(申し訳なさそうに)遅くなってごめんなさい。」

母:「帰宅時間がこんなに遅いと、事件や事故に巻き込まれるのではないかと心配したわ。」

Y子:「わからない問題があって、友達に教わっていたら遅くなっちゃったの...。」

母:「わからない問題を友達に教わっていて、遅くなってしまったのね。」

Y子:「そうなの。それにちょっと相談にのってもらってたから...。でも心配をかけちゃったね。」

母:「そうよ。本当に心配してしまったわ。」

Y子:「今度からは、もう少し早く帰るようにするね。」

母:「そうしてくれると安心よ。ありがとう。」


いかがでしょうか?子どもは親が心配する気持ちを感じて、遅くなった理由を説明するとともに自分の行動を反省し始めました。心配をかけないために、自分がどのように行動すればいいのかという解決策を自分で語ることもできました。
行動を変えた(変えると言った)相手には、忘れずに感謝を伝えます。


心配のあまり子どもに対して怒ったり、感情的な言い方をしてしまったような時は「私はなぜイライラしているのだろう、なぜこう感じたのだろう」と考えてみて下さい。落ち着いたら「さっきはキツイ言い方をしてゴメンネ」と謝ります。
心配や不安なことは、自分への影響を入れたわたしメッセージ(第2回参照) にして伝えると、親の率直な気持ちが子どもに通じやすいのです。しかし子どもから反発があったらしっかりと受け止めることも忘れずに。
日々のコミュニケーションの中で、親が“自分の言うことも聞いてくれる”という子どもからの信頼があってこそ、お互いに尊重できる親子関係が作られます。ところが「女の子が夜遅く出歩くなんて」「男の子と付き合うなんてまだ早い」などと親の考えばかりを一方的に言うと、反発や抵抗を招き、子どもが親に話したい、話そう、と思っていた気持ちを抑えてしまいます。



親のしがちな対応 <お決まりの12の型>

子どもが悩みのサインを出しているような時に、親の立場や都合で対応するやり方には次のようなパターンがあります。いずれもよく見られるもので、親は子どものためと思って「おまえのためだから」「将来のことを思って言っているのよ」と、叱咤激励や説教をして、解決策を与えようとします。しかし、多くの場合子どもの反発を招いて逆効果になってしまいます。

円滑なコミュニケーションを阻み、子どもとの関係を悪くしてしまう言い方、親のしがちな対応例(お決まりの12の型)をまとめました。

【例】子どもが「受験勉強をしたくない」と言い出した。

親:

(1) みんな受験をするんだ。おまえも勉強しなさい(命令)

(2) 受験勉強をしなかったら、いい高校に入れないぞ(脅迫)

(3) つらくても我慢しなきゃいけない時がある。いつまでも遊んでいられない(説教)

(4) そんなに大変だったら勉強時間を少し減らしてみたらどうだ(提案)

(5) 世の中には進学できない子だっているのよ。勉強できる環境にいるだけでもありがたいと思ってしっかりやりなさい(講義・命令)

(6) そんなに勉強しているわけでもないのに、何を言っているんだ(非難)

(7) お前の言うのももっともだよ。受験勉強がいやならいやでいいよ(同意)

(8) 甘えるんじゃない!そういうことは合格してから言うことだ(侮辱)

(9) 模試の結果が悪かったから、志望校に合格できるかどうか不安になったのか?(分析)

(10) 確かに大変ね。楽しい時も苦しい時もあるけれど、今頑張れば良いこともあるよ(同情)

(11) 今さらなんでそんなことを言い出すんだ?クラスの友達はどうなんだ?受験勉強なんてくだらない、とでも言われたのか?(尋問)

(12) 睡眠不足なんだろう。今夜は早く寝ろよ(ごまかし)

 

いかがでしたか。これらの中に、あなたが普段、子どもに向かって言ってしまいそうなセリフはありませんでしたか?

これら12のパターンの共通点は、親が子どもの言葉に共感も受容もしていないことです。子どもは「受験勉強をしたくない」と悩みのサインを出しているのに、親は自分の言いたいことばかり言っています。子どもが白いボールを投げてきたのに、親は、自分の投げたい赤や黄色のボールを投げ返しているのです。これでは子どもはこれ以上話せなくなり、本当の気持ちを表へ出すことができません。
ではこんな時どうすればよいのでしょうか。

子どもの言葉や態度を「悩みのサイン」と感じたら、親はまず自分が話すのをやめ、子どもの話を聞くことに集中します。そして子どもの気持ちを受け止め、理解していることを、言葉や態度で伝えます。その時には親業の能動的な聞き方(第1回参照) がとても効果的です。
親が子どもの言葉をくり返すだけでも、子どもは自分の気持ちをより深く考えることができるようになります。その結果、子ども自身で気持ちの整理をし、時には解決策をみつけることさえできるのです。

~親は聞き上手になろう~

子どもが自分の悩みや、気持ちを表す言葉を口にした時、親は自分ではなく、子どもに焦点を合わせて能動的に聞いてみて下さい。親業では「子どもの自立とは、子ども自身が悩んだ時に自分の力で解決策を見つけて、その問題を克服できるようになること」と考えます。そのためには、子どもが常に親から指示・命令されるのではなく、子ども自身が問題を解決できる、と親から信頼されていることが大切です。
親は子どもを自分の所有物と考えて、解決策を与える「おきまりの型」で対応しがちです。しかし自分の子であっても別の人格と考えて、信頼関係に基づくコミュニケーションをとることで子どもも成長し、より愛情の伝わる親子関係を築くことができるのです。

以上、親のしがちな対応「12のおきまりの型」についての解説とまとめでした。

※過去3回の連載でとりあげた「聞く」「話す」「対立を解く」というテーマも参考に、皆さんのご家庭でも、親業のコミュニケーション手法をぜひ試してみてください。

今回で、全4回にわたってお届けしてきた“親業”の連載も最終回です。取り組み始めてすぐの頃は、うまく会話が出来ず失敗したと感じることもあるでしょう。子どもも「急に親の様子が変わっておかしい!」と、疑い深い態度をとることもあるようです。しかし、その先には大きな変化があるかもしれません。

思春期の子どもとのコミュニケーションがうまくいかないときは、親が常に権力を使って強制や命令しているか、あるいは親がガマンして子どもに合わせすぎていないか、自分の家庭を振り返ってみて下さい。

良い親を演じるのではなく、自分も子どもと同じ一人の人間だ、ということを素直に出して自分を語ってみると、意外に話ができるもの。

子どもは決して、親の思いどおりにはなりません。しかしどんなに愛するわが子であっても自分とは異なる人間であることを認めれば、思い通りにならないのが当然と受け入れられるでしょう。自分で問題を解決していく、頼もしくなった子どもと接するとき、親子というよりも、自然に一人の人間としてわが子を見ている自分に気がつくのではないでしょうか。

思春期の子どもたちと保護者の皆様のコミュニケーションが、少しでもスムーズになるよう、親業のメソッドをご活用いただければと願っています。

内山睦美(うちやまむつみ)

Profile

内山睦美(うちやまむつみ)

親業訓練インストラクター

都内を中心に親業訓練講座、講演を行っている。また、読み聞かせを通じ地域の子育て支援活動に参加。幼児教育にも関わる今、親業で自分も周りも満足できるコミュニケーションの輪を広げるのが目標。中学、高校生の母。

 

 



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