2016-04-11

特別インタビュー
都立中高一貫教育校の校長先生からのメッセージ




校長 上野 勝敏先生特別インタビュー

“文理両眼”「2016 年度より理数アカデミー校に。認知の網を広げるための学びを6年間でさまざまに展開していきます」

東京都立富士高等学校附属中学校
東京都立富士高等学校を母体として2010年に開校。富士高校は1920年に東京府立第五高等女学校として開校し、1950年、東京都立富士高等学校に改称。2016年3月に第1期生が卒業。東京工業大、名古屋大、東北大など難関国立大に合格者を出している。


この記事は「2017年度入試用中学受験案内」(旺文社)より転載しました。


2016 年度から「理数アカデミー」校に。全教科でサイエンスを意識した授業を展開

――大正時代開校の伝統校ですが、中高一貫教育校となった現在、中学3年間の教育はどのような目標を掲げているのでしょうか?

上野 富士では、中学から高校の6年間で、国際社会で活躍するリーダーを育成することを目標にしています。それは教科を絞って難関大学に合格させるというようなことではなく、6年間で「認知の網」をどれだけ広げられるかが重要だと考えています。そのためには、文系・理系のどちらかに偏らない、バランスの良い知性を育てることを意識しています。どちらかというと文系に偏ってしまう傾向の生徒にも理数系をしっかり学んでほしいということで、本校は都立校では唯一、「理数アカデミー校」の指定を2016 年度から受けることになりました。

――「理数アカデミー校」となって、どのような取り組みが始まるのでしょうか?

上野 実験や観察を通して理科好きの生徒を育て、理科離れを解消させることももちろん目指していますが、それ以上に、たとえば国語や家庭科といった教科でも「サイエンス」を意識した授業をするなど、すべての教科で理数系の素養を伸ばす教育を展開する予定です。全教科を通じて理数教育を耕していくことがとても重要だろうと考えています。富士高校ではこれまで、理数フロンティア校、理数イノベーション校と指定を受けてきた実績がありますが、それを附属中学からの6年間に広げられるというのが、理数アカデミー校となっての大きな変化です。

その一環として、中3生を対象に東京大学の先生にワークショップを開いてもらいました。来年度からは外部研究機関や大学の協力を得て、さまざまな講座やワークショップを行いたいと考えています。また、中学3年次にはアメリカ視察研修も企画していく予定です。

ただ、これで本校が理数系の学校になってしまうのかというとそうではなく、はじめにお話しした通り、文系・理系に偏らない知性を育て、全体の質的向上を目指すための取り組みです。「文理両眼」が大前提になります。文系にも理系にも強い学校としていっそう磨きをかけていくことに変わりはありません。


学習習慣を定着させるために、さまざまな取り組みを実践

――「富士メイクアップ方式」や「富士サポートシステム」など、独自にさまざまな取り組みをされているようですね。

上野 学習習慣をつけさせ、学力の定着を図っていく方策が「富士メイクアップ方式」で、定期考査を年7回行っています。通常の5 回の考査のほかに、夏と冬の長期休業明けに「総合考査」を設定しています。既習範囲を学習し直し、やりっぱなしにならないようにするための試験です。生徒からすると休み明けすぐに成績に反映される試験があるので大変でしょうが、これは大きな効果を生んでいるのではないかと思います。

また、学習習慣をつけさせるため、「放課後スタディー」も行っています。中学生には家庭学習を原則2 時間行うよう指導していますが、そのうちの1時間を、食堂を開放するので、そこで勉強して帰ってもらおうというものです。とくに中1生は夏休みまでは全員参加で、放課後スタディーを優先させるため、部活動も週2回に制限させています。入学していきなり家で2時間勉強するのはつらいだろうから、最初のうちは1時間は学校で勉強し、家で残りの1時間勉強してもらう。そうして2時間の家庭学習を生活習慣にしていけるようにという取り組みです。

その週の学習時間などを生徒が記録していく「ホスタップ」「ホスタビュー」という取り組みもあわせて行っています。この記録は、勉強時間の割に成績が伸びない生徒など、個別の指導において大きな資料になります。さらに、英語と数学ではつまずきをなくし、力をのばすための習熟度別授業も行い、少人数で個別指導をしています。

――生徒の学習習慣をつけさせるための取り組みがこれだけ丁寧だと安心される保護者も多いでしょうね。ほかにも独自の方策はありますか?

上野 英語力の育成にも力を入れていて、原書を読む「多読」という授業を行っています。これは毎週1回、英語圏の小学生・中学生が読むような本を選んで読むもので、辞書を使わず英語を理解していくことが目標です。教科書とは書き方も違うので新たな発見につながっているようです。またレシテーション(暗唱)コンテストも行っていて、キング牧師の演説やケネディ大統領の就任演説といった、有名な演説を各クラスの代表者が暗唱して発表します。ほかにも短期集中の語学研修や、ブリティッシュヒルズでの宿泊語学研修など、さまざまな取り組みを通じて、生徒は抵抗感なく、積極的に英語を使っていくようになります。

――行事も多そうですね。学校行事や部活動はどんな雰囲気で行われているのでしょうか?

上野 本校では学校行事も部活動も、できるだけ中高合同で行っています。部活動では中学生と高校生では体力差もあるので何もかも一緒というわけではありませんが、身近に接することで、中学生は高校生に憧れ、高校生は中学生の前では凛々しい姿を見せようと頑張っています。部活動加入率は100%を超えています。東京都のスポーツ強化校に、本校の剣道・薙刀・陸上の3 部が指定されていますし、文化部でも合唱部や茶道部、管弦楽部など活動は活発です。

学校行事では、生徒自らが「体育祭・文化祭・合唱祭」が富士の三大行事だと言っています。生徒主体で行うことで、自主自律を育んでいます。

本校の生徒はとても素直です。それに、数学ができる生徒もいれば英語の発音がきれいな生徒がいたり、楽器を上手に弾ける生徒もいれば、走るのが速い生徒もいる。そんな能力をのびのびと発揮でき、それをお互いが認め合うという雰囲気があるように思います。


5教科7 科目の国公立型の受験指導を強めていく方針

――中高一貫校になって初めての卒業生をこの春送り出します。大学受験を目指した進学指導について教えてください。

上野 第一期生190人のうち、90人が5教科7科目型の受験をしました。本校では今後、国公立型の進学指導を強めていく方針です。とくに東大を意識して、東大の研究室を訪問したり、東大生に放課後来てもらい、中学生には「理数質問教室」、高校生には「理数勉強会」の名で勉強を見てもらったりしています。

また、首都圏の国公立大学だけではなく、地方の国公立大学にも目を向けるため、関係者を招いてガイダンスを行っています。

平成32 年度より大学入試センター試験が廃止され、新評価テストが実施されるという流れが明確にある以上、中学に入学される生徒の保護者の方々には、生徒たちを間違いなく指導していきますと申し上げています。学力に適した学びを強化していきたいと考えています。

――最後に、希望する受験生と保護者に向けて、メッセージをお願いします。

上野 私たちは富士でこれからの世界を託していける人材を育てていきたいと考えています。ぜひ本校で能力を磨き、仲間と一緒に成長していってほしいですね。6年間、いろいろな経験値を積み、人間性を陶冶しながら豊かに成長することを願っています。学び合える仲間が、その仲間を指導してくれる先生が、本校にはたくさんいます。


この記事は「2017年度入試用中学受験案内」(旺文社)より転載しました。




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