2018-04-02

特別インタビュー
都立中高一貫教育校の校長先生からのメッセージ




校長 永森 比人美先生特別インタビュー

「6年間のストーリーを踏まえた自律的・体験的な教育活動を通して、生徒の生き方・在り方につなげ自己実現を図っています」

東京都立 南多摩中等教育学校
1908(明治41年)に東京府立第四高等女学校として開校した、東京都立南多摩高等学校を母体として2010年に開校。2016年3月に第1期生が卒業。1・2期生ともに、東京大、東京工業大、一橋大、北海道大など難関国立大に合格者を出している。


この記事は「2019年度入試用中学受験案内」(旺文社)より転載しました。


将来の生き方の探索へとつながっていくフィールドワーク

――中高一貫校としての、御校の特色について教えてください。

永森 どの中高一貫校でもそうですが、本校も「世界のさまざまな分野で活躍できるリーダーを育成する」ことが大きな目標です。そのために「心を拓く・知を極める・体を育む」として、「心知体」のバランスのとれた人間力を培うことを教育目標にしています。

具体的な特色としては、フィールドワーク活動があります。これは総合的な学習の時間に行う体験型の探究活動で、学年ごとにテーマを設定してステップアップしていきます。

1年生のときは地域調査として多摩地域の現地調査に出かけ、ポスターセッションで発表します。

2年生では、東京探索や京都・奈良への研修旅行を通して、扇子や茶碗、箸といった1つのモノに焦点をあてて探究し、『モノ語り』という冊子を作って発表します。

3年生では科学的検証活動として、事実や真実とされるものについて、さまざまな手法で確かめ、パワーポイントを使って発表します。首都大学東京の先生に指導していただく機会も設けています。

1~3年の前期生はすべてグループ研究ですが、グループで活動することでリーダーシップとフォロワーシップの関係性もできるし、何をするべきかを話し合うなど、基本的なことが学べます。また、これからは文系であれ理系であれ、物事を科学的に捉えて論理的に説明する力が求められますが、その力を育むために、3年次の科学的検証活動はとても意味があると思っています。

4~6年の後期生では、4・5年次に「ライフワークプロジェクト」として、今度は個人研究に進んでいきます。単に調べて発表するのではなくて、自分が興味を持ったことについてゼミ形式で問いを深めていきます。優れた論文は毎年「南多摩論集」として冊子にまとめ、各種発表会に出場する際は英語でも発表しています。

――論文をまとめた冊子を拝見しましたが、本当にテーマもさまざまで、奥が深いですね。

永森 ここで取り組んだテーマが、将来の生き方、あり方につながっていきます。自分が何を研究していきたいのか、またどんな仕事に進んでいきたいのかに結びついてくるんです。

たとえば、ライフワークプロジェクトで自然保護のあり方をテーマに、知床の自然保護について研究した生徒は、もっと外に出て新たなことを知りたいと、アメリカのコロラド州立大学自然生態学部に進学しました。

太鼓のばちの消耗について研究した生徒は、もともと太鼓部で活躍していて、時にばちが折れることがあることが研究のきっかけになりました。まとめた論文が日本学生科学賞を受賞し、その論文を生かして東京大学工学部に推薦入学を果たしました。

本校は国公立大学に進学を希望する生徒が多いですが、これはフィールドワークを通して行ってきた研究や興味を、さらに育んでいける大学に行こうと考えるからです。

自律的・体験的な探究学習であるフィールドワークを通して生徒たちの進路実現が明確になり、自己実現につながっているのだと思います。


段階的な学びのバランスを大切に。6年一貫の強みを生かす学習活動

――進路実現のための日頃の学習活動はどのように行っているのでしょうか?

永森 知識を注入する時期と、知識を活用する時期とがあり、それは6年間お預かりするからこそバランスよくできると考えています。そのために、6年間のシラバスを「何をどのようにどの程度学習するか」、評価の観点や方法も含めて理解できるように冊子にして年度当初に全生徒に配布して説明しています。また、ホームページにも公開しております。日頃の授業のほかに補習や土日の学習支援も行い、卒業生をチューターに放課後指導も行っています。

また、本校は3つの推進校・指定校を受けています。1つが「英語教育推進校」で、本校独自の取り組みとしては1・2年次に希望者に24ヶ国の生徒とスカイプでつながる「グローバルスカラーズ」という活動を行っています。

そのほか、3年次にはフィリピンの先生とマンツーマンでオンライン英会話に取り組み、4年次にオーストラリア研修旅行に行き、5年次には全員がGTEC(4 技能)を受けるなど、6年間を通して目標をもって取り組めるようにしています。

「理数イノベーション校」では、フィールドワークで理数のテーマを掲げるほかにも、科学の甲子園といった各種コンテストや発表会に参加したり、「植生調査と天体観測」など希望制のプログラムを作ったりしています。

また、2017年度から指定を受けたのが「知的探究イノベーター推進校」で、これによりフィールドワーク活動の更なる充実を図りたいと思います。


盛り上がる3大行事。全国大会で活躍する部活動も

――学校行事や部活動も盛んだそうですね。

永森 3大行事があるんですが、盛り上がりますよ。まず5月に体育祭があります。1年生から6年生まで縦割りで行いますから、入学したての1年生は先輩たちについていこうと必死になります。6月が合唱祭。クラスごとの合唱ですが、1年生を3年生が教えたりします。9月の文化祭は、先輩たちのレベルの高い発表を肌で感じる機会です。

部活動も盛んです。特に南多摩フィルハーモニー、太鼓部、陸上競技部、なぎなた部は全国大会に出場するなど、顕著な成績を修めています。

個人では2017 年に陸上競技部が走り幅跳びでインターハイで優勝しました。後輩は先輩の背中を追いかけ、さらに努力しようと頑張るから、高い実績が続くようです。

前期生と後期生が一緒に活動している部もありますが、体力差もあるので、メニューを変えて活動したり、きちんと休みを取るようにもしています。こうして、学校行事や部活動を通して1~6年生までが交流する中で、思いやりの心や切磋琢磨する強さを身につけられるようにしています。

――6年を通してさまざまな学びやコミュニケーションが体験できるのではと感じました。最後に、御校を希望する受験生と保護者に向けて、メッセージをお願いします。

永森 本校は八王子の自然に囲まれた環境にあります。生徒たちはみんな純朴で素直で、地域の南多摩高校時代の同窓生の方々からもとてもかわいがっていただいています。

各教科で学んだことがフィールドワークに生き、フィールドワークで体得したことが各教科の学習に活用できるように、また、前期課程で学んだ探究の基礎が、後期課程のライフワークプロジェクトに円滑につながり、より一層、生徒の生き方・在り方につながるよう6年間のストーリーを踏まえた教育活動のマネジメントを行ってまいります。本校の卒業生がやがて社会の一線で働くとき、本校で磨いた力がどんなふうに輝いてくるのかが楽しみでなりません。本校の卒業生からノーベル賞を受賞するような人材が出ると、私はひそかに思っています。


この記事は「2019年度入試用中学受験案内」(旺文社)より転載しました。




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