志望校選択は、人生の大きな岐路といっても過言ではありません。 志望校を選択する上で、教育カリキュラムはとても重要です。
しかし、なかなか教育の中身まで知る機会は少ないかもしれません。
長いようで短い3年間の高校生活。
本当に “面白い” と思えるような勉強が学校でできること、好きな科目や研究に出会えることが、とても大切です。
パスナビでは、特色ある教育カリキュラムをテーマに連載を開始します。
第2回目は、第1回目に続き、理科・数学に特化した教育を行う「スーパーサイエンスハイスクール」の特集です。
スーパーサイエンスハイスクールとは
未来を担う科学技術系人材の育成をねらいとして、理数系教育の充実をはかる取り組みで平成14年度からはじまりました。
文部科学省が「スーパーサイエンスハイスクール(※以下SSH)」として、高校を5年間指定します。平成23年度現在、SSHの学校数は計145校あります。
SSHに指定された高校では、先進的な理数教育の実施、英語でのプレゼンテーション演習等による国際性を育成するための取り組み、大学等と連携してカリキュラム開発を行うなど、理科・数学教育を重点的に行い、科学技術に夢と希望を持つ創造性、独創性の豊かな人材育成に取り組んでいます。
東京・神奈川・埼玉・千葉県 SSH採択校一覧
※平成18年度指定で、平成23年度新規指定に採択された学校
(全国のSSH一覧校はこちら )
埼玉県立大宮高校のSSHは平成21年度で5年目、最終年度を迎え集大成の年でした。 今回は、大宮高校のこれまでのSSHの取組みと2月13日に行われた「平成21年度SSH研究成果発表会」の模様を取り上げます。
大宮高校は理数科と普通科が設置されていますが、全校生徒が共通科目としてSSH学校設定科目を受けることができます。
たとえば1年次はスーパーサイエンス(以下SS)生物環境、SS保健体育、SS国際情報があります。
中でも珍しいものが、保健体育の教科を科学的に学習する学校設定科目「スーパーサイエンス保健体育」です。
主には、自分たちの体について科学的な視点から筋力、柔軟性、持久力を研究しています。授業では、専門家を外部講師として招き、ベンチプレストレーニングを使った実習・測定などを行っています。
高校では前例が少ないため、カリキュラムや教科書は先生方が協力して開発したそうです。
これらの取組みが評価され、平成21年度には体力向上優良校として県から表彰されました。
理科系部活動の活性化とSSH事業の普及を目的として、平成20年度からは「スーパーサイエンスクラブ」(※以下SSC)を設置しました。校内では、ミーティングや実験、各行事の事前指導、事後指導・レポート作成、科学教室などの取組みを、校外では、実験実習・見学や研究発表会などさまざまな活動をしています。
SSH担当教員の一人である斎藤顕子先生は、「科学に積極的に取り組みたいという新入生を募集して、さまざまな活動の機会を提供しています。」と述べられていました。
SSH5年目を迎えた平成21年度は、初の試みとして近隣の小中学生対象に校内で科学教室を開催し、保護者を含め約160名が参加されたそうです。
培った研究成果は、県内高校をはじめ近隣の学校に情報共有化し、発信されています。
さらなる発展と進化を目指し、平成22年度はSSH事業に継続申請して採択されました。
2月13日の発表会は、1年を費やした研究成果の発表の場です。SSH概要説明の後に、在校生の研究発表会がありました。
生徒が研究成果をまとめてポスターを使って説明する「ポスターセッション」では、SSH学校設定科目の『SS総合物理』、『SS総合化学』、『生活科学』、『SS保健体育』、『SS生物環境』、部活動での取組みとして、物理部、化学研究部、生物部の計19本の研究発表、およびSSC活動報告(臨海実習、皆既日食観測会、鹿島技術研究所訪問、理研脳科学講座、東大再生医療実習)が展示されていました。
実験器具の実演やコンピュータでの動画演示など、趣向を凝らした視覚的な発表が多数ありました。
来賓の教育関係者や保護者の方から質問を受け、堂々と説明される生徒の姿が印象的でした。
■ポスターセッションにて 生徒にインタビュー!■
●SSCに所属している1年生(現2年生) 和田龍馬くん●
-大宮高校を選ばれた理由は何ですか。
中学生から理科が好きで、SSHの採択校である大宮高校を志望しました。
-学校の勉強やSSC活動、部活動の両立は大変では…?
高校の授業では課題が多くて大変ですが、夜は10時に就寝し、朝6時に起床するよう心がけ、勉強時間を確保しながら陸上部とSSCを両立しています。
-校外活動ではどのような行事が印象的でしたか。
昨年度は、奄美大島の皆既日食観測会に参加しました。
自然現象を100人以上の中高校生と一緒に観察できたことは、素晴らしい体験でした。
●衝突球を作って実験! 2年生(現3年生) 太田翔くん(SS総合物理)●
-大宮高校を選ばれた理由は何ですか。
もともと理科の実験が好きでしたが、自分一人で実験をすることはできません。そこで、実験ができる環境と機会を与えてくれる大宮高校を選びました。
-課題研究に費やした時間はどのくらいですか。
課題研究には4月から週1回の授業と、冬休みの2日間集中実験講座で取り組みました。
-1年を通してご自身がどのように成長したと思われますか。
以前は自分の考えを心の中で思うことはありましたが、人に説明する機会はほとんどありませんでした。
SSHの授業ではプレゼンテーションの機会が多いため、説明力や伝達力がついてきた気がします。
受動的に授業を受けるだけではなく、今回の課題研究のように、自主的に取り組むことが、自分の将来のためにもなると感じます。
まずは、学校設定科目『SS国際情報』の成果として、1年生が「高速道路無料化」をテーマに賛成派と反対派に分かれて英語でディベートを繰り広げました。
その後、『不思議だね!ガウス加速器』(SS総合物理)、『電子レンジを用いたPETの化学分解』(SS総合化学)、『土壌動物の季節変動と植樹の影響Ⅱ』(SS総合生物)、『ミドリムシの光走性Ⅲ』(生物部)の発表が行われました。
約20分間のプレゼンテーションにおいて、メモを見ることもなく堂々と発表をする生徒の皆さん。
研究発表後は、来賓者からの質問や意見、指摘やアドバイスが活発に飛び交っていました。
SSH事業によってもたらす学校や生徒の変化について、理数科主任の木村真先生に伺いました。
「平成17年時のSSH採択当時は、先生方が生徒に呼びかけても、しり込みしてしまう生徒もいましたが、ここ数年でとても積極的になりました。 ある生徒は、研究テーマを決める際に熊本の大学にその研究に詳しい先生がいることを知り、自発的に連絡を取り続け、ついに熊本から大宮高校まで実際に来ていただいたこともありました。」
この発表会を見学して、生徒が積極的に研究に取り組み、学校が一丸となって生徒をサポートしている様子が伝わってきました。
なお、研究会当日の午前は中学1、2年生を対象に公開授業があり、約180名もの中学生が見学されていたそうです。
木村先生は、「中学生には大宮高校の中身をよく見て知ってもらったうえで、自分に合う学校選びをしてほしい」とおっしゃっていました。
平成22年度もSSHの発表会や公開授業、小中学生対象の科学教室等が予定されています。
ぜひ実際に足を運んで、大宮高校の“パワー”を感じてみてください。