いま世間を賑わしているニュースに「風疹ウイルス大流行」というものがあります。
国立感染症研究所の最新データによると、2012年は2,392例の報告で過去4年間で最高でしたが、2013年は4月17日時点で4,068例と驚異的なペースで増加しているようです。
参考までに、2009年は147例、2010年は87例、2011年は378例です。
男女別では男性が3,173例、女性が895例と男性の方が多くなっています。
1995年以前に中学校を卒業した女性は、ほとんどの方は中学校で予防接種を受けています。また、1994年以降に生まれた子供は幼児期に任意の予防接種があります。
これらの集団に含まれない20代〜40代の男性が、風疹患者全体の約66%を占めています。特に30代の男性は全体の30%近くにのぼります。
風疹は、発熱や全身の発疹等の症状を伴いますが、重症化はしないとされています。
しかし、これだけ注意が呼びかけられている理由は、妊娠期の女性に感染することで、子どもに障害が出ることが懸念されるからです。
上記のデータを見てもわかる通り、20代〜40代の男性の感染者が多く、その配偶者は妊娠時期になり得る年齢層です。
したがって、妊娠可能性のある女性だけでなく、男性も機会を見つけて予防接種を受けることをおすすめします。
ここからはサイエンスの話をします。
風疹はウイルスによって感染します。
人間の体では、細胞のなかでDNAがRNAに転写され、そこからタンパク質が作られるのですが、風疹ウイルスは、はじめからタンパク質を作ることができるRNAを持っています。
このウイルスが感染すると、人間の細胞のなかでウイルスのRNAからタンパク質が作られ、それによって風疹の症状が出てくるのです。
風疹ウイルスには亜型がないとされています。
亜型というのは、インフルエンザウイルスでの「H7N9型」といったウイルスの持っている構造の違いです。
たとえば、インフルエンザウイルスのワクチンがH1N1型に対する抗体を作るものであれば、H7N9など、別の亜型のウイルスにはその抗体は効果がないと考えられます。
さて、風疹ウイルスには先に述べたように亜型がありません。
したがって、一度感染して抗体が作られると、その抗体を保持している限り、二度と風疹ウイルスに感染することがなくなるのです。
これが、予防接種が特に効果的である理由でもあります。
長くなってしまいましたが、現在驚異的に増加している風疹について、簡単に解説させていただきました。
女性だけでなく、男性もウイルスについて知って、ぜひ予防接種を受けることを考えてみてください。
医学博士(免疫アレルギー学)で免疫料理研究家のToshiが免疫学の基礎をレクチャーします。さらに、家族が喜ぶ「美味しく」、「楽しく」、「健康に」をモットーにした、免疫力を高め、受験勉強や入試に打ち勝つレシピを掲載します。受験生のご家族必読!毎月1回更新予定です。