――校長として着任なさるまでの2週間で、東京と京都を何度か行き来なさったとお聞きしましたが、その目的は何だったのでしょうか。
3月の内示後すぐに、赴任校の状況をリサーチしました。そこで、特に生徒指導が困難と想定された新3年生のクラスサイズについて、「京都式少人数教育」(*1)の「少人数学級」を適用することが最適ではないかと考えたのです。
ですので、4月1日までに当時勤務していた東京と京都を2往復し、京都の教育委員会と協議しました。目的は、新3年生を「40人×3学級」から「30人×4学級」にするためです。
また、このタイミングで学校の仕組みを変えることは、「何か変化するのではないか」という職員の新年度への期待を後押しするにも有効に作用するはずだと考えていました。
学級を増やしたことで、教員の授業持ち時間は増えました。時間数で見ると、負担が増えるように見えるかもしれませんが、この方策の検証のために実施したアンケート調査では、生徒指導や学級経営面での改善と併せて、学習指導上でも大きな効果があったとの回答を得ました。実際、新3年生は全体として落ち着きを取り戻し、授業への前向きの姿勢がみられるようになりました。
意識の改革は、かけ声だけでは進みません。何らかのシステムの変更(“しかけ”)が必要だと考えました。
クラスサイズを変更するという判断は、結果的に、4月からの学校改善を図る上で、重要なターニングポイントの一つになりました。
*1 京都府では、「京都式少人数教育」を推進しています。これは、小学校3年生から中学校3年生まで、少人数授業、ティームティーチング、少人数学級などの指導方法・指導体制を、市町村教育委員会が学校や子どもの状況に応じて柔軟に選択して実施できる方式です。
――本来、4月当初に完成するはずの学校経営計画が、1ヶ月遅れの5月になったそうですね。それはなぜでしょうか。
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学校経営計画は、5月当初の職員会議で決定しました。
変化を起こすには、スピードとタイミングが必要です。
1ヶ月遅れに見えるかもしれませんが、ある意味、1年間早めたともいえます。
~第2回目 キーワード ~
変化を起こすには、スピードとタイミングが重要。
厳しい状況を打破し、組織力、同僚性を高めるためには、ビジョンの共有化・方向の一致が欠かせない。
盛永俊弘-京都府向日市立西ノ岡中学校校長。学校心理士。京都府乙訓教育局人事主事、同総括指導主事、文部科学省・国立教育政策研究所教育課程研究センター情報統計官を経て、2009年4月より現職。山森光陽・荘島宏二郎編『学力-いま、そしてこれから』(分担執筆)。